El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

2022-01-01から1年間の記事一覧

現代思想入門

どんなに生きても満足できる人生はない ってことですね 現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也 講談社 Amazon 人生が変わる哲学・・・うーん、こんなことを職業にしているのか哲学者。 やさしくわかりやすく書かれているので、デリダ、ドゥルーズ、フ…

双調平家物語(9) 平治の巻(承前)

300ページで三年間! 双調平家物語 (9) 平治の巻(承前) 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon 保元元年(1156年)の保元の乱の終結後から平治元年(1159年)の平治の乱の勃発まで、わずか3年の間の出来事に一冊全部、300ページ超が費やされる。日本史の教科書で…

古寺行こう(5)薬師寺 行ってみた

唐招提寺とあわせ一本というところか 隔週刊 古寺行こう(5) 薬師寺 2022年 5/10 号 [雑誌] 小学館 Amazon 「古寺行こう」を手に、古寺に行ってみるシリーズ。今回は奈良は西ノ京「薬師寺」。いつもは修学旅行生でいっぱいな感じだが、コロナのせいで人がいな…

アルツハイマー征服

征服にはほど遠く、タイトルやカバー絵が。患者や家族に本書を買わせようというのが透けて見える。 アルツハイマー征服 作者:下山 進 KADOKAWA Amazon アルツハイマー病の治療薬開発の歴史を年代ごと研究者ごとに並べてくれている。前半はエーザイがドネペジ…

老後は要領 孤立しないで自立する

中身は相変わらずだが・・・一回は読んでおいても 老後は要領 孤立しないで自立する 作者:和田 秀樹 幻冬舎 Amazon 50歳、60歳、70歳、80歳年代ごとに似たような老後本を書きまくっている和田秀樹先生。一冊だけ立ち読みで読んでみることに。 基本は「働ける…

双調平家物語(8) 乱の巻(承前) 平治の巻

リアリスト藤原信西により歴史が加速 双調平家物語 8 乱の巻(承前) 平治の巻 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon 「双調平家物語」は途中で話が膨らんで、第五巻から始まった「保元の巻」だが、「保元の乱」が起こるのは第八巻。 自分の妻(待賢門院)と祖父…

模倣の罠 自由主義の没落

冷戦が終結して共産主義が自由主義に敗北。自由主義ワールドが世界的に広がっていくのか(いわゆる「歴史の終わり」)と思ったが、そうはならなかったのは、現在(いま)を生きる我々がもっとも切実に感じるところ。 一旦は自由主義に向かった中欧・東欧、さ…

文学部唯野教授(単行本+Audible)

Audibleで過去の記憶がよみがえり、最後は本を読む 文学部唯野教授 作者:筒井 康隆 Audible Amazon 聞き放題のAudibleでウォーキングしながら聴いていたら、文学理論の講義の部分が面白くなって書棚の本を取り出して読み返すことになった。 文学部唯野教授 (…

本の雑誌 2022年6月号 結句、西村賢太

西村賢太 追悼号。連載中に死去した西村賢太と坪内祐三について 本の雑誌468号2022年6月号 本の雑誌社 Amazon 西村賢太(1967年7月12日~2022年2月5日)2月の突然の訃報から3か月、本の雑誌6月号は「特集 結句、西村賢太」がほぼ100ページと追悼号。 西村賢太…

安部公房とわたし

時の流れがすべてを恩讐の彼方に 安部公房とわたし (講談社+α文庫) 作者:山口果林 講談社 Amazon ヤマザキマリさんの「壁とともに生きる わたしと『安部公房』」を読んだ流れで、2013年の出版されたころに読んだことのある山口果林「安部公房とわたし」を通…

壁とともに生きる わたしと「安部公房」

いま、安部公房を読み直したいと思えるか? 壁とともに生きる わたしと「安部公房」 (NHK出版新書) 作者:ヤマザキマリ NHK出版 Amazon テルマエ・ロマエのヤマザキマリさんによる安部公房のブックガイド。異色の組み合わせとも思えるが、世界を放浪してき…

双調平家物語(7) 乱の巻

平安末期の「おっさんずラブ」 双調平家物語〈7〉乱の巻 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon 上皇のいる院と帝のいる朝廷。力を持つのが院であるがゆえにルーズな人事が横行し、閑院流藤原氏や六条流藤原氏といった傍流の藤原氏が院の近臣として力を持つ。そ…

EXTRA LIFE なぜ100年間で寿命が54年も延びたのか

もっと読まれていい、具体的な寿命延長史! EXTRA LIFE なぜ100年間で寿命が54年も延びたのか 作者:スティーブン・ジョンソン 朝日新聞出版 Amazon 寿命の延び(=ゼロ歳の平均余命の延び)は乳幼児死亡率の劇的減少(20%→1-2%)で起こった。20世紀の前半ま…

ヒトはなぜ「がん」になるのか 進化が生んだ怪物

「がん遺伝子パネル検査」もしょせんは商業主義・・ ヒトはなぜ「がん」になるのか; 進化が生んだ怪物 作者:キャット・アーニー 河出書房新社 Amazon 著者のキャット・アーニーはイギリスのがん研究基金「キャンサー・リサーチUK」の科学コミュニケーション…

ドイツ・ナショナリズム

エキセントリックな研究者の自己満足!? ドイツ・ナショナリズム-「普遍」対「固有」の二千年史 (中公新書 2666) 作者:今野 元 中央公論新社 Amazon かなり独特のわかりにくい文章で辟易した。結局言いたことは「おわりに」と「後記」に書かれている程度の…

双調平家物語(6) 保元の巻(承前)

暴君・白河帝の長命の末に武者の世へ 双調平家物語〈6〉保元の巻(承前) 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon 一冊丸々「白河天皇(上皇)」。白河天皇は在位1072-1086、譲位して白河上皇となって院政は1086-1129、やりたい放題の57年間。乱脈という意味では、…

推し、燃ゆ(Audible)

東横キッズになっていくの? 推し、燃ゆ 作者:宇佐見 りん Audible Amazon アイドルファンの応援行動が先鋭化して「おっかけ」なんて呼ばれた時代もあったが、今はそれらを含めたトータルな言葉が「推し」。若い女性のライフスタイルの一部に「推し活動(推…

古寺行こう(1) 法隆寺 行ってみた

小学館「古寺行こう」を片手に法隆寺に行ってみて驚いた 隔週刊 古寺行こう(1) 法隆寺 2022年 3/22 号 [雑誌] 小学館 Amazon 驚きーその1:人が少ない! 金曜日平日だったせいもあるが、今の奈良は観光客がとても少ない。中国からの観光客が戻るまで、奈良…

古寺行こう 全巻予約

全巻予約してしまった・・・ 隔週刊 古寺行こう(1) 法隆寺 2022年 3/22 号 [雑誌] 小学館 Amazon 隔週刊 古寺行こう(2) 東寺 2022年 3/29 号 [雑誌] 小学館 Amazon 隔週刊 古寺行こう(3) 東大寺 2022年 4/12 号 [雑誌] 小学館 Amazon 古寺行こう(4) 興福寺 2…

さみしいネコ

「定年後エッセー」で癒される さみしいネコ【新装版】 作者:早川良一郎 みすず書房 Amazon 定年後の生活と意見や、平凡なサラリーマン(経団連の事務局にお勤めだったようだ)時代のあれこれの思い出を、柔らかに語る随想集。早川氏は1919年生まれで1979年…

エネルギーをめぐる旅 (Audible)

エネルギーから見たサピエンス全史 エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来 作者:古舘恒介 英治出版 Amazon 「エネルギー」版のサピエンス全史。「エネルギー」を軸におくことで、リアリティが高まり、かつ知らなかった内容も多いので、サピエンス…

ボクもたまには がんになる

三谷幸喜の前立腺がん経験記 ボクもたまにはがんになる 作者:三谷 幸喜 幻冬舎 Amazon 「鎌倉殿の13人」の脚本家、三谷幸喜氏の前立腺がん闘病記。といっても、実際にがんを発見し治療していたのは「真田丸」の始めの頃らしいので5年ほど前。この本で、初め…

双調平家物語(5) 父子の巻・保元の巻

驚異の橋本流日本史 奈良時代末期から院政の直前まで 双調平家物語〈5〉父子の巻・保元の巻 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon 本巻は、奈良時代末期から平安盛期・藤原時代(摂関政治)の終焉まで。 前半三分の一は、なぜ全盛時代と思われたその時に藤原仲…

メモ 橋本治 日本古典作品一覧

偶然読み始めた「双調平家物語」だが、さらに note の chisato_mrt さんのこの記事がさらに背中を押してくれて、橋本治の日本古典を読む気力がアップ⇑ しかし、道は長い これで古典がよくわかる 古典を読んでみましょう 橋本治の古事記 桃尻語訳 枕草子(全3…

エドワード・ホッパー作品集

寂しいあなたの姿を描くホッパーの世界を届けます。 エドワード・ホッパー作品集 作者:江崎聡子 東京美術 Amazon 家族でファミレスに来て、みんなそれぞれのスマホをのぞき込んでいるような孤独感、それがホッパー。どの絵のどの人物も、その人そのものとい…

「ワーニャ伯父さん」から「ドライブ・マイ・カー」まで

話題のアカデミー賞映画を準備万端で観てみました。 ワーニャ伯父さん ——田園生活の情景 四幕—— 作者:アントン チェーホフ Amazon アメリカのアカデミー賞。話題の邦画「ドライブ・マイ・カー」は作品賞は逃しましたが、国際長編映画賞を受賞しました。 この…

がん検診は、線虫のしごと

直感的には「あやしい」話と思っていたら文春砲に撃たれたが、どうなる がん検診は、線虫のしごと 精度は9割「生物診断」が命を救う (光文社新書) 作者:広津 崇亮 光文社 Amazon 微小な寄生虫である線虫の嗅覚を研究していたという著者の広津氏。線虫の嗅覚…

双調平家物語(4) 栄華の巻3

あー! 奈良時代ってそういうことだったのか! 双調平家物語〈4〉栄花の巻(3) 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon 奈良時代は「聖武天皇の時代」。天智、天武のあと、娘でもあり妻でもある持統女帝から元明・元正とつなぎの女帝のあとに「聖武天皇(724-749)…

サピエンス全史(Audible)

Audibleで聴きました。全部聞くと24時間! サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福 作者:ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田 裕之 Audible Amazon 24時間かけて聴くのは時間のムダだったかな。活字であればある程度読み飛ばして、もう少しスピーディに行けた…

生命を守るしくみ オートファジー

オートファジー、ブレイクするのかまだよくわからない 生命を守るしくみ オートファジー 老化、寿命、病気を左右する精巧なメカニズム (ブルーバックス) 作者:吉森保 講談社 Amazon 2016年、オートファジーでノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典氏、その…