El librero la Fontana / ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

吉田初三郎鳥瞰図集

 さすが地図の昭文社、見やすい吉田初三郎!

日本や戦前の満州・台湾などをデフォルメした鳥瞰図で描き続けた吉田初三郎。多くは横長で新聞の新年号の付録だったり、各観光地が自己紹介のために制作を依頼したらしい。

この図集には収載されていないが「高千穂名所図絵」(宮内庁三の丸尚蔵館)のコピーを持っている。それには、わが父と母と私自身の生家の場所がなんとなく推定でき「ああ、このあたりだ!」という喜びがあった。それは偶然自分の故郷だったからだと思っていた。

ところがこの図集を見ると、どの鳥瞰図を見ても行ったことがある場合には「そうそうこんなところだったね」と思い出させるし、行ったことがない場合には「うわー、行ってみたい」と思わせる。これって、やはり吉田初三郎のパワーだよね。なんだか、どこも懐かしい感じが地図から立ち昇ってくるなんて。

そんな吉田初三郎集を地図の昭文社が地図製本のノウハウを生かしたのか、折り込みを広げればオリジナルの吉田初三郎の地図が鮮やかによみがえる。あるいはやや大きいくらい。また時には超拡大図もあり。楽しい。

同じ鳥瞰図である「全国鉄道絶景パノラマ地図帳」(集英社)と見比べながら楽しむとリアルとデフォルメを行ったり来たりでさらに楽しい。

ダーウィン「種の起源」を漫画で読む

 専門家以外は「種の起源」はこの本でOK

三部構成で第1部「進化論の誕生」はダーウィンの人となり、「種の起源」書かれる直前までの研究の状況、他の研究者の動向など、第2部が「種の起源」を原著通りの15章の章立てに沿って各章のエッセンスがマンガと本文の引用(きちんと解説とは区別して表示されているところもGood)で描かれる。第三部は、その後の論争およびダーウィン死後のメンデルの再発見からDNAそして現在へと続く。

現在の我々は、DNAの存在を当たり前の知識としてダーウィンの考えに触れるので、その卓抜さがわかりにくくなっている面があるが、ダーウィンをはじめとする先人の発想の転換があり、それが少しずつ解明された結果としての現在という、視点を取り戻すことができる。構成の妙、アニメ風とは異なるイラストのタッチもふさわしい感じ、もう専門家以外は「種の起源」はこの本で楽しめばいいんじゃないか。

狩られる者たち(メモ)

 

メモ

 狩られる者たち | 小学館 (shogakukan.co.jp)

北欧発驚愕のスリラー、シリーズ第2弾!
 広大な雪原に建つ病院の中で男は目覚めた。医師から「サム」と呼びかけられた男は、記憶を失いながらも本能にかき立てられる如く、逃走を試みる――。
「大胆不敵な驚き」「なんとも蠱惑的な犯罪小説」「アルネ・ダールが化けた」――「このミス」8位、「ミステリが読みたい!」10位。2020年の翻訳ミステリ界を騒然とさせた、スウェーデン発驚愕のスリラー『時計仕掛けの歪んだ罠』、待望のシリーズ第2弾!

読む・打つ・書く(メモ)

 

メモ

読む・打つ・書く - 東京大学出版会 (utp.or.jp)

内容紹介
ようこそ、みなかワールドへ! 理系研究者を生業としながら,数多の本を読み,新聞やSNSなどさまざまなメディアで書評を打ち,いくつもの単著を出版してきた〈みなか先生〉からの〈本の世界〉への熱きメッセージ.さあ,まずはたくさん本を読もう!
東京大学出版会創立70周年記念出版
主要目次
本噺前口上 「読む」「打つ」「書く」が奏でる “居心地の良さ”

プレリュード――本とのつきあいは利己的に
 1.読むこと――読書論
 2.打つこと――書評論
 3.書くこと――執筆論

第1楽章 「読む」――本読みのアンテナを張る
 1-1.読書という一期一会
 1-2.読む本を探す
 1-3.本をどう読むのか?――“本を学ぶ”と“本で学ぶ”
 1-4.紙から電子への往路――その光と闇を見つめて
 1-5.電子から紙への復路――フィジカル・アンカーの視点
 1-6.忘却への飽くなき抵抗 ――アブダクションとしての読書のために
 1-7.“紙” は細部に宿る――目次・註・文献・索引・図版・カバー・帯
 1-8.けっきょく,どのデバイスでどう読むのか

インターリュード(1)「棲む」―― “辺境” に生きる日々の生活
 1.ローカルに生きる孤独な研究者の人生行路
 2.限界集落アカデミアの残照に染まる時代に
 3.マイナーな研究分野を突き進む覚悟と諦観

第2楽章 「打つ」――息を吸えば吐くように
 2-1.はじめに――書評を打ち続けて幾星霜
 2-2.書評ワールドの多様性とその保全――豊崎由美『ニッポンの書評』を読んで
 2-3.書評のスタイルと事例
 2-4.書評頻度分布の推定とその利用
 2-5.書評メディア今昔――書評はどこに載せればいいのか
 2-6.おわりに――自己加圧的 “ナッジ” としての書評

インターリュード(2)「買う」――本を買い続ける背徳の人生
 1.自分だけの “内なる図書館” をつくる
 2.専門知の体系への近くて遠い道のり
 3.ひとりで育てる “隠し田” ライブラリー

第3楽章 「書く」――本を書くのは自分だ
 3-1.はじめに――“本書き” のロールモデルを探して――逆風に立つ研究者=書き手
 3-2.「読む」「打つ」「書く」は三位一体
 3-3.千字の文も一字から――超実践的執筆私論
 3-4.まとめよ,さらば救われん――悪魔のように細心に,天使のように大胆に
 3-5.おわりに――一冊は一日にしてならず……『読む・打つ・書く』ができるまで

ポストリュード――本が築く “サード・プレイス” を求めて
 1.翻訳は誰のため?――いばらの道をあえて選ぶ
 2.英語の本への寄稿――David M.Williams et al.,The Future of Phylogenetic Systematics
 3.“本の系統樹” ――“旧三部作” から “新三部作” を経てさらに伸びる枝葉

本噺納め口上 「山のあなたの空遠く 『幸』住むと人のいふ」


Climbing the Impossible Mountain:
Reading, Reviewing, and Writing for the Bookworm-Scientist
Nobuhiro MINAKA
関連書
生物系統学 三中 信宏 著 税込6,820円/ 本体6,200円
ナチュラルヒストリー 岩槻 邦男 著 税込4,950円/ 本体4,500円
新版 動物進化形態学 倉谷 滋 著 税込13,200円/ 本体12,000円
動物と人間 三浦 慎悟 著 税込22,000円/ 本体20,000円
生き物の描き方 盛口 満 著 税込2,420円/ 本体2,200円
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7/2『読む・打つ・書く』刊行記念イベント(ネット配信)をゲンロンカフェで開催

がんを瞬時に破壊する光免疫療法(メモ)

 

メモ

 小林久隆 特設サイト | がんを瞬時に破壊する 光免疫療法 | 光文社新書 (kobunsha.com)

今日の一冊(151)『がんを瞬時に破壊する光免疫療法』 | 残る桜も 散る桜ー膵臓がん完治の記録 (cancer-survivor.jp)

がんを瞬時に破壊する 光免疫療法
身体にやさしい新治療が医療を変える
小林久隆/著

光免疫療法――人体に無害な近赤外線を照射してがん細胞を消滅させる、がんの新しい治療法が世界で注目を集めている。この治療法は2012年、アメリカ元大統領のバラク・オバマが一般教書演説で「米国の偉大な研究成果」と世界に誇ったことでも知られる。
2020年9月には、光免疫療法で使われる新薬「アキャルックス点滴静注」が世界に先駆けて日本で正式に薬事承認され、事業が本格化した。光免疫療法とはどのような治療法なのか。身体への負担は? 副作用は? 転移・再発の可能性は? アメリ国立衛生研究所の日本人開発者が、治療の詳細と特徴、これからの医療、そして「貧者のプライド」を初めて語る。

目次
まえがき
第1章 光免疫療法とは何か
第2章 IR700の発見
第3章 治験
第4章 化学への目覚め
第5章 変容するがん医療
終 章 医療の未来が変わる
あとがき

著者紹介
小林久隆(こばやしひさたか)
1961年、兵庫県西宮市生まれ。現在、NIH/NCI(アメリ国立衛生研究所・国立がん研究所)分子イメージングプログラム主任研究員として勤務。87年、京都大学医学部を卒業し、95年に京都大学大学院内科系核医学を専攻し修了、医学博士号取得。同年に渡米、NIH臨床研究センターフェローに。98年に帰国し、京都大学医学部助手を経て、2001年に再渡米、NIHのNCIにシニアフェローとして勤務、05年から現職に。11年、光免疫療法の論文が米医学誌『Nature Medicine』に掲載される。光免疫療法の研究・開発により14年にNIH長官賞、17年にNCI長官個人表彰を受賞。他に5回のNIH Tech Transfer Award等を受賞。

休み時間の免疫学 第3版(メモ)

 免疫学学びなおしはまずこの一冊

メモ

休み時間の免疫学 第3版 | 書籍情報 | 株式会社 講談社サイエンティフィク (kspub.co.jp

  • Chapter 1 細菌感染に対する防御反応のストーリー
  • Chapter 2 細菌感染における抗体産生のストーリー
  • Chapter 3 ウイルスに対する防御反応のストーリー
  • Chapter 4 補体と免疫細胞
  • Chapter 5 適応免疫に関わる物質〜抗体・抗原
  • Chapter 6 適応免疫に関わる細胞〜リンパ球の世界
  • Chapter 7 免疫による感染症の防御
  • Chapter 8 過剰・異常な免疫による疾患のメカニズムⅠ:Ⅰ型アレルギー
  • Chapter 9 過剰・異常な免疫による疾患のメカニズムⅡ:Ⅰ型アレルギー以外の免疫疾患
  • Chapter 10 免疫細胞を制御するもの〜分子生物学

時計仕掛けの歪んだ罠

スウェーデン、雨、時計、黒い靴下

スウェーデン発の警察ミステリー。とにかく雨が多いんですね10月のスウェーデン

捜査する側とされる側が交錯したり逆転したり最後は協働したり、その展開が極めてよくできていてスリリングで一気に読んでしまう(特に第二部)。まあ、〇〇〇の復讐譚という主題はモラル的にどうなの?、時計をそこまでからませるという違和感(作者の趣味?)、なんでも調べてくれる情報便利屋の存在は都合よすぎ(最後は靴下)、など後から考えると、なんだかなあと思う部分もあるが、それはまあ創作なので。

ミステリーによくあることなのだが、二人の主人公ともあるときはとても緻密なのにあるときはとてもルーズなのが、ダレルアルネ。

スウェーデンはわたしの子供時代は高福祉国家で「良い国」の代表みたいに考えていたが、時代はかわり寛容な移民政策(2015年まで)のために中近東やアフリカからの移民も多く社会問題にもなっているし、ロシアマフィアやイスラム国のような勢力の浸透という問題も抱えている・・・という社会情勢がミステリーにも反映してる。