El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

2015-01-01から1年間の記事一覧

感情教育

フレデリックはわたしだ 感情教育〈上〉 (岩波文庫) 作者:フローベール 発売日: 1971/03/16 メディア: 文庫 感情教育〈下〉 (岩波文庫) 作者:フローベール 発売日: 1971/04/16 メディア: 文庫 フローベル「感情教育」読了する。途中、あまりの煮え切らない人…

世界を動かす技術思考

職人技ではなくシステム 世界を動かす技術思考 要素からシステムへ (ブルーバックス) 作者:木村 英紀 発売日: 2015/05/21 メディア: 新書 固そうなタイトルだが、「職人技ではなくシステム」あるいは「一騎打ちではなく長篠の戦い」ということだろう。なんと…

女たち三百人の裏切りの書

女たち三百人の裏切りの書 作者:日出男, 古川 発売日: 2015/04/28 メディア: 単行本 神戸にまで持って行ったりして読みつなぎなんとか本日読了。語られる現在は平安末期、院政から平家の台頭そしてじりじりする源氏というそんな時代。この時代の藤原氏・上皇…

私の世界文学案内

私の世界文学案内―物語の隠れた小径へ (ちくま学芸文庫) 作者:渡辺 京二 発売日: 2012/02/01 メディア: 文庫 渡辺京二「私の世界文学案内」をざっと目を通す。渡辺京二の他の文章でも出てくる「近代性」のもたらしたコンヴィヴィアリティ不在の世界、つまり…

終の住処

まゆつば・・ 終の住処(新潮文庫) 作者:磯崎 憲一郎 発売日: 2014/10/03 メディア: Kindle版 芥川賞受賞作の「終の住処」(100円で並んでいたので)を読んでみた。うーん、人生の不条理?思い付きで書き進めるらしいが、これで文学といえるのか???読み…

破獄

緒形拳の顔が浮かぶ 破獄 (新潮文庫) 作者:昭, 吉村 発売日: 1986/12/23 メディア: 文庫 吉村昭「破獄」読了。しばらくほっておいたが読了。まあ、昭和監獄史という読み方もできるところが「吉村流」でしょう。続けて読むとなんとなくだれてくる吉村昭ですが…

巨大ウイルスと第4のドメイン

巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト (ブルーバックス) 作者:武村 政春 発売日: 2015/02/20 メディア: 新書 まあ、話としては研究者本人の興味と読者の興味はシンクロしない。生命の起源とウイルスというかウイルス工場。ウイルスが生…

神戸の本棚

神戸・・終の住処か 神戸の本棚 作者:植村 達男 発売日: 1986/10/01 メディア: 単行本 神戸に関わりのある、本・作家・作品、それに著者自身の思い出などが軽い感じで書かれている。しかし、微妙にトゲのある表現もあり、著者は意外と皮肉屋かもしれない。 …

ワンコイン悦楽堂

消えた天才 ワンコイン悦楽堂 作者:竹信 悦夫 発売日: 2005/12/10 メディア: 単行本 灘中高の出身で天才と言われた人らしい。巻末に灘時代の同級生高橋源一郎と東大時代の同級生内田樹の対談が掲載されており、これがなかなかおもしろい・・・というかこれが…

それでも読書をやめない理由

ネット社会との付き合い方 それでも、読書をやめない理由 作者:デヴィッド・L. ユーリン 発売日: 2012/02/01 メディア: 単行本 電子書籍がらみかと思っていたが、どちらかというとネットに蹂躙された社会批判とその中での読書生活についてあれこれ論じる。 …

潮目の予兆

文系学者の悲哀 潮目の予兆――日記2013・4-2015・3 作者:原 武史 発売日: 2015/08/18 メディア: 単行本(ソフトカバー) 「潮目の予兆」(原武史・図書館本)を昨夜から読み始め午前中に読了。いくつかのキーワードで言えば、皇室がらみの政治学、鉄道趣味、書…

「社会(コンヴィヴィアリテ)」のない国、日本

社会のかわりに会社がある国 「社会」のない国、日本 ドレフュス事件・大逆事件と荷風の悲嘆 (講談社選書メチエ) 作者:菊谷和宏 発売日: 2015/03/27 メディア: Kindle版 「「社会(コンヴィヴィアリテ)」のない国、日本」(菊谷和宏・図書館本)読了。今日…

近代の呪い

大衆のルサンチマン 新書700近代の呪い (平凡社新書) 作者:渡辺 京二 発売日: 2013/10/15 メディア: 新書 「近代の呪い」(渡辺京二)を電車で読み直している。ほぼ読了。結局は、大多数を占める、それであるがゆえに満たされない、そんな大衆の少数な豊かな…

世界の辺境とハードボイルド室町時代

勝ったものがみなもらう 世界の辺境とハードボイルド室町時代 (集英社文庫) 作者:高野 秀行,清水 克行 発売日: 2019/05/17 メディア: 文庫 けっこうおもしろい。二人の語り手の人生も見えてきたりして。彼らの書いたものも読みたい。日本の中古車しか海外に…

街道をゆく オランダ紀行

ゴッホへの旅 街道をゆく〈35〉オランダ紀行 (朝日文芸文庫) 作者:司馬 遼太郎 発売日: 1994/11/01 メディア: 文庫 街道をゆく オランダ紀行、深夜に読了。ゴッホのことがよくわかる。ゴッホの弟テオとその妻マチルダ、彼らなくしてゴッホは残らなかったとい…

服従

近代西洋社会は進化論的には畸形である という寓話 服従 (河出文庫 ウ 6-3) 作者:ミシェル・ウエルベック 発売日: 2017/04/19 メディア: 文庫 フランスにイスラム政権誕生というプロットであるが、本質的には、キリスト教的(あるいはウェーバー風にプロテス…

定年後7年目のリアル

文庫 定年後7年目のリアル (草思社文庫) 作者:勢古 浩爾 発売日: 2014/08/02 メディア: 文庫 まあありきたりとも言えるが昭和22年生まれでちょうど10年先人か。自分の10年後のリアルということになるのか。ブックガイドとしては面白いかも。

社会心理学講義

社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書) 作者:小坂井 敏晶 発売日: 2013/07/18 メディア: 単行本(ソフトカバー) 「社会心理学講義」( @小坂井敏晶 :ちくま選書)図書館本、「ちくま」の連載からの関係で借りてみたが・・・個々…

後白河院

後白河院 (新潮文庫) 作者:靖, 井上 発売日: 1975/10/01 メディア: 文庫 平安末期から鎌倉初期、つまり院政期から武士の台頭、保元・平治の乱、平家全盛と没落から鎌倉幕府の時代、年代で言えば12世紀の日本の中央権力の有様を復習できる、またある程度わ…

遺伝子の川

文庫 遺伝子の川 (草思社文庫) 作者:リチャード ドーキンス 発売日: 2014/04/02 メディア: 文庫 かなり概念的に難しい部分あり。しかし、ドーキンス、グールドらのこうした科学啓蒙書は面白いし、仕事にも役立つし、仕事場で読んでも様になるということで、…

吉村昭自選作品集第二巻

帝国海軍もまた・・・ 吉村昭自選作品集 第2巻 戦鑑武蔵・陸奥爆沈 作者:吉村 昭 メディア: 単行本 「戦艦武蔵」海軍ドキュメンタリー系列作品。まさにそこで行われていることが近視眼的で集団自殺的であること。「陸奥爆沈」「艦首切断」「転覆」、これらは…

いいとこどり・国境のない生き方・坂の上の坂

女の偉さが見えて―くるー♪ 国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書) 作者:ヤマザキ マリ 発売日: 2015/04/01 メディア: 新書 まとめてメモを書いておく。 A 西原理恵子「いいとこどり」 B ヤマザキマリ「国境のない生き方」 C 藤原和博「坂の上の…

地図と領土

地図と領土 (ちくま文庫) 作者:ミシェル ウエルベック 発売日: 2015/10/07 メディア: 文庫 ウェルベックの「地図と領土」を読了。結局めくるめくうちに読んでしまった。人生の終焉を見た。ベストな終焉であってもせいぜいがジェドなのだ。それが死ということ…

羆嵐

北の大地は侮れず 羆嵐 (新潮文庫) 作者:昭, 吉村 発売日: 1982/11/29 メディア: 文庫 北海道でライオンズ追っかけ旅。空港で吉村昭の「羆嵐」という小説を読む。北の大地は恐ろしいところでもある。

影武者徳川家康

60代の人生はこれほどアクティブであり得るー作家も家康も 影武者徳川家康 上中下巻セット (新潮文庫) 発売日: 1993/08/25 メディア: - 史実と仮説をうまく組み合わせて一流のエンターテインメント性を持たせながら、学問的興味も喚起する作品。小説の作…

猟師の肉は腐らない

自然回帰から母を想う・・ 猟師の肉は腐らない 作者:小泉 武夫 発売日: 2014/07/18 メディア: 単行本 読書によって得られる、あるいは得てしまう自己の感覚の変化。例えば、「猟師の肉は腐らない」を読むと、自然との関わりをもった生活を送りたいという気に…

おろしや国酔夢譚

流れるようなストーリー・テリング 新装版 おろしや国酔夢譚 (文春文庫) 作者:井上 靖 発売日: 2014/10/10 メディア: 文庫 新幹線の車中、ずっと井上靖の「おろしや国酔夢譚」を読んでいた。これがおもしろいし、本当に読みやすいのだ。読みやすい、とはどう…

エピジェネティクス

瓢箪から駒の時代だった エピジェネティクス――新しい生命像をえがく (岩波新書) 作者:仲野 徹 発売日: 2014/05/21 メディア: 新書 ほぼ一日中、仲野徹の岩波新書「エピジェネティクス」を読む。一般人向けの本だろうが少し難しいのではないか。大きな流れは…

大君の通貨 幕末円ドル戦争

幕末「円ドル」戦争 大君の通貨 (文春文庫) 作者:佐藤 雅美 発売日: 2003/03/07 メディア: 文庫 知識という意味では結構面白い。また、歴史資料を精読することでこんな感じの歴史推理的なものが書けるということも面白い。少しでも違和感を感じたことを追求…

デジタルは人間を奪うのか

デジタルの限界をちらりと教えてくれる デジタルは人間を奪うのか (講談社現代新書) 作者:小川 和也 発売日: 2014/09/18 メディア: 新書 デジタルには「無から何かを作り出すこと」は(今のところ)できない。複雑化していけば一見何かを創造しているかのよ…