El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ブラッド・メリディアン

ウクライナを見よ、ガザを見よ! ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤 (ハヤカワepi文庫) 作者:コーマック マッカーシー 早川書房 Amazon 昨年亡くなったコーマック・マッカーシーの代表作。乾いた文体(うまく日本語でも表現されている)。 1850…

むらさきのスカートの女 Audible

ふしぎな味わいだが・・・ むらさきのスカートの女 作者:今村 夏子 Audible Amazon 叙述トリック?芥川賞は・・なぜ?でいいのかも。 メフィスト賞、でもないか。とはいえ、この後おなじAudibleで「黄色い家」(川上未映子)を聴いてみると、西村賢太の書く…

ダーウィンの呪い

「適者生存」と「貧乏人の子沢山」をつなげると・・・? ダーウィンの呪い (講談社現代新書) 作者:千葉聡 講談社 Amazon 「ダーウィンの呪い」というタイトルだが、「進化論」がいかにたやすく優生学的危険思想に転化してきたか、という黒歴史本。そもそもダ…

人間は老いを克服できない

煽情的ではあるゆえに、コロッと賛成してしまいそうだが・・・ 人間は老いを克服できない (角川新書) 作者:池田 清彦 KADOKAWA Amazon 池田清彦のメルマガ「池田清彦のやせ我慢日記」の連載の1年半くらいを新書にして出版しているもの。いくつか賛成できる論…

祝!完結「私の本棚」3シリーズ 全36回 index

医学系サイトm3に長年連載してきた「私の本棚」シリーズ全3シーズンがこのたび完結。全36回足掛け5年、毎回m3の編集部による丁寧な校正のおかげもあって、読みやすく、読みごたえあり(?)全36回分のindexを下記に。 〇第1シーズン「私の本棚」(2019.8.8~…

「新・私の本棚」全12回完結しました!

医学情報サイトm3に連載していた「新・私の本棚」、予定の12回が完結しました。 https://membersmedia.m3.com/authors/322#/ ←会員のみ閲覧可能のため、こちらのブログにその都度転載してきました。祝・完結ということで12回分のラインナップをまとめておき…

新・私の本棚 (12)記憶と忘却の関係性とは…

https://membersmedia.m3.com/articles/10269#/ 記憶と忘却の関係性とは…医師が学ぶ「記憶研究」の現在地 65歳すぎの元外科医ホンタナが、一般向け医学書籍の中からテーマごとに3冊をセレクト、同世代の医師に紹介するブックレビューのサード・シーズン「新…

心淋し川 Audible

千駄木を舞台に江戸下町の日常連作 心淋し川 作者:西條 奈加 Audible Amazon Audibleで聴いています。40年前、20代の終わりころ、医科歯科大の大学院に行くことになって博多から引っ越してきたのが「千駄木」。根津の日本医大病院の裏手で、まさにこの連作時…

東京都同情塔

うーん、言葉遊び 東京都同情塔 作者:九段理江 新潮社 Amazon 文学、それも芥川賞寄りの「純文学」とはもはやこんな形なのか。SNSと生成AIを盛り込んで「言葉」をテーマに、と思いきや、言葉→バビロンの塔→塔→建築家となって、妙に言葉に拘泥する女性建築家…

終わらない週末

週末に終末がきたのだけど、なかなか終わらない 終わらない週末 作者:ルマーン アラム 早川書房 Amazon 映画の「アルマゲドン」のような世界の終末を描いた物語がある。本書も世界の終末の姿を描いたものと言ってもいい。しかし、ここではアルマゲドンのよう…

ブックガイド(121)ー疲労と疲労感は別ものー

https://uuw.tokyo/book-guide/ 疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた (ブルーバックス) 作者:近藤一博 講談社 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトのブックガイドです。第12…

パッキパキ北京

綿矢りさ熱が昂じて、買ってしまったけれど パッキパキ北京 (集英社文芸単行本) 作者:綿矢りさ 集英社 Amazon 「綿矢りさ熱」が昂じて買ってしまったが、も少しハチャメチャを期待していただけに少し残念。綿矢りさ自身の北京滞在記をちょっとヤンキーに色付…

疲労とはなにか

ノーベル賞級の発見・・・というけれど、どうなの 疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた (ブルーバックス) 作者:近藤一博 講談社 Amazon この本の内容について検索すると「ノーベル賞級の発見」と絶賛するものもあるが、それら絶賛は、この著者周辺…

Fontana’s Cinema Paradiso:ホンタナ氏の映画天国

映像関係の記事を別ブログにまとめました↓ これまで映像関係のレビューは日記にメモだけ書いて、そのうち☆星5つの評価のものだけこの読書ブログにも記載していました。 次第に、セミリタイアみたいな生活パターンになる中、映画系のサブスクも増え、映画館も…

凍える牙 Audible

火曜サスペンスレベル・・・ 凍える牙 作者:乃南 アサ Audible Amazon うーん、最初の人間発火でその後の展開に期待したがだんだんグズグズな展開になってしまうし表現は冗長だしで、これで直木賞? まだ10%ほど残しているので、最後の最期で精神科の主治医…

水車小屋のネネ

パラダイス、ロスト あるいは・・・ 水車小屋のネネ 作者:津村 記久子 毎日新聞出版 Amazon 500ページ弱と結構長い小説だけどするすると読ませる。新聞連載だったみたいで、「朝ドラ」的。北関東のどこかとおぼしき内陸の小都会が舞台。ただし、オウムという…

しょうがの味は熱い Audible

ギブ・アップ しょうがの味は熱い 作者:綿矢 りさ Audible Amazon 女性が聴いたらもっと心にひびくのかもしれないが・・・。いわゆる恋愛症候群というか恋愛至上主義の女性のモノローグが続くのがつらい。こじらせ女子を俯瞰的にみれている「勝手にふるえて…

かわいそうだね Audible

若い女性を描かせれば当代一! かわいそうだね? 作者:綿矢 りさ Audible Amazon 「かわいそうだね」・・・「かわいそう」と考えることの不遜さ?そう考えることでの自己正当化(かわいそうだから・・・してあげなくちゃ)なんてやっているとじりじりと押し…