ウクライナを見よ、ガザを見よ!
昨年亡くなったコーマック・マッカーシーの代表作。乾いた文体(うまく日本語でも表現されている)。
1850年頃に実在したグラントン・ギャング団というインディアン狩り(もちろん、それ以外のメキシコ人や黒人やアメリカ人も平気で無造作に殺す)集団の興亡を描きながら、それら悪漢たち、とくにグラントンとホールデン判事の「殺す論理」が随所に開陳される。殺す論理があって、実際にとことん殺す。
ホールデン判事は言う「人間は戦争をこよなく愛しているから戦争はなくならない、人間は戦争によって文明や科学を発達させてきただけでなく戦争をするからこそ高貴なのだ、戦争こそは神である。」
主には少年(Kid)の目を通して、それらすべてが語られるのだが、地の文と会話とが分けずに書かれるという独特の記述で、主語がいったいだれなのか戸惑いながらも、酔ったように読み進む独自のグルーブ感がある。
wikiからの引用↓
本書がアメリカ先住民虐殺に対し、これが人間のすることかという人道的な怒りを告発していないことは明らかで、 それはマッカーシー本人の発言からも分かる。1992年のインタビューにおいてこんな発言をしている。
「流血のない生などない。人類がある種の進歩をとげ、すべての人が仲良く平和に暮らせるようになり得るという考えは危険だ。そんな考えに取りつかれる人たちは魂と自由を平気で捨ててしまえる連中だ。そんなことを望む人間は自ら奴隷になり、命を空虚なものにしてしまうだろう」
「殺される側ではなく殺す側にならなければ殺される」、過保護なコンプラ社会からみたらとんでもない話だが、ウクライナを見よ、ガザを見よ!