El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

金閣寺の燃やし方

金閣寺事件にも多面的な見方がある 金閣寺の燃やし方 (講談社文庫) 作者:酒井順子 講談社 Amazon 金閣寺焼亡事件を小説に描いた三島由紀夫と水上勉を比較することで、主に三島の性格的にユニークな部分を描き出すことに成功している。その分析の中では「金閣…

死体格差 異状死17万人の衝撃

最近動向を踏まえた日本の死因究明制度分析 死体格差 異状死17万人の衝撃 作者:山田 敏弘 新潮社 Amazon 「日本の死因究明制度がいかにダメか」という本はこれまで何冊も書かれているがその多くは、その当事者の一人である法医学医師(多くは大学の法医学教…

超耐性菌 現代医療が生んだ「死の変異」

タイトルとは違って、感染症医の奮闘と努力のドキュメンタリー 超耐性菌 現代医療が生んだ「死の変異」 作者:マット・マッカーシー 光文社 Amazon 著者のマット・マッカーシーはプロ野球マイナーリーグの経験もある医師。感染症医としての著者マットが抗菌薬…

鎌倉殿と執権北条氏

2022大河ドラマ「鎌倉殿の13人」 鎌倉殿と執権北条氏 義時はいかに朝廷を乗り越えたか (NHK出版新書) 作者:坂井 孝一 NHK出版 Amazon 2021年の大河ドラマは見なかったが、2022年の大河ドラマは「鎌倉殿の13人」。源平合戦ー鎌倉幕府ー北条氏の覇権ー承久…

世界で一番売れている薬

創薬もスリリングだ! 世界で一番売れている薬: 遠藤章とスタチン創薬 (小学館新書) 作者:喜美子, 山内 小学館 Amazon 日本が世界に誇る創薬はいくつかあるが、まさに「世界で一番売れている薬」であるコレステロールを下げる薬、スタチン(メバロチンやビタ…

女帝 小池百合子

逆に小池百合子の上昇志向をほめたい 女帝 小池百合子 (文春e-book) 作者:石井 妙子 文藝春秋 Amazon 著者はまあ、小池百合子をまさに無茶苦茶にこきおろしているわけだが、逆に、言ってみれば裸一貫から、さまざまな武器を駆使して、国会議員になり大臣にな…

うんちの行方

「うんち」三部作、その2 うんちの行方 (新潮新書) 作者:神舘和典,西川清史 新潮社 Amazon この本のあとがきにもあるのだが、子供の本では漢字ドリルまで「うんち」化しているのに、大人の本でありそうでなかった「うんち」本が、このところ三冊続けて出版…

続・私の本棚 (8)医師も深く関与する「少子化」

還暦過ぎの元外科医ホンタナが、医学知識のアップデートに役立つ一般向け書籍をセレクトし、テーマごとに同世代の医師に紹介するブックレビューのセカンドシーズン「続私の本棚・還暦すぎたら一般書で最新医学」です。第8回は「人口」、特に「少子化」にフォ…

贖罪の街(上・下)

ハリー・ボッシュ シリーズ (18) 2015年 ボッシュ65歳の設定 贖罪の街(上) (講談社文庫) 作者:マイクル・コナリー 講談社 Amazon LADPの定年延長を陰謀で打ち切られたボッシュ。ハーレーのバイクをレストアする静かな日々を送ろうとするが、なにかしっ…

宝島

Audibleで聴きました。約40日のウォーキング期間(録音時間18時間22分)。 宝島 作者:真藤 順丈 Audible Studios Amazon 終戦(1945)から返還(1972)くらいまでの沖縄を舞台に、そのころの沖縄はこうだっただろうなというフィクション。書いたのは沖縄人で…

皮膚の秘密

皮膚のことを一通り知るには良い、ただし著者は美容系?かも 皮膚の秘密 最大の臓器が、身体と心の内を映し出す 作者:ヤエルアドラー ソシム Amazon 皮膚科というのは他科の医師にとってとっつきにくいところがある。本書の著者はドイツではマスコミにもよく…

金閣を焼かなければならぬ

頻発する動機不明の事件の背後には精神疾患を考えるべき 金閣を焼かなければならぬ 作者:内海健 河出書房新社 Amazon 1950年鹿苑寺金閣に火をつけて焼失させた見習僧、「林養賢」。その金閣焼亡事件を1956年に小説「金閣寺」として書き、作家としての名声を…

日本の血脈

「女帝 小池百合子」を読む前に肩慣らしとして 日本の血脈 (文春文庫) 作者:石井 妙子 文藝春秋 Amazon BAD BLOOD(エリザベス・ホームズの詐欺事件)を読んで、日本のホームズは小池百合子?!ということから「女帝 小池百合子」を読む予定だが、本が届く前…

燃える部屋(上・下)

ハリー・ボッシュ シリーズ (17) 2014年 ボッシュ64歳の設定 燃える部屋(上) (講談社文庫) 作者:マイクル・コナリー 講談社 Amazon ついにボッシュの年齢が読み手である私の実年齢に到達。同じように定年延長制度のおかげで好きな仕事に精を出している…

僕は偽薬を売ることにした

意外とマジメなプラセボ論だが思い込みも強い 僕は偽薬を売ることにした 作者:水口直樹 国書刊行会 Amazon タイトルとヘタウマなイラストでまともな本ではないのかもと思って読みだしたが二つの点で有益。 まず第一に、1,2章におけるプラセボの歴史をふまえ…

ブックガイド(98)―指先採血で世紀の詐欺!―

「新しい検査法」に要注意! BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相 (集英社学芸単行本) 作者:ジョン・キャリールー 集英社 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコン…

ベロニカとの記憶

三度見ても新しい ベロニカとの記憶(字幕版) ジム・ブロードベント Amazon ジュリアン・バーンズの「終わりの感覚」を映画化したもの。映画の英語タイトルは原作どおり「Sense of an Ending」なのだが、ちょっと難しいからか邦題は「ベロニカとの記憶」と変…

病理医が明かす 死因のホント

病理医が解剖しなくなったという現実 病理医が明かす 死因のホント (日経プレミアシリーズ) 作者:榎木 英介 日本経済新聞出版 Amazon 著者は1971年生まれの病理医。病理医が死因究明にどれだけからんでいるのだろうとおう思いで読んでみたが、当てが外れた感…