El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

女帝 小池百合子

逆に小池百合子の上昇志向をほめたい

著者はまあ、小池百合子をまさに無茶苦茶にこきおろしているわけだが、逆に、言ってみれば裸一貫から、さまざまな武器を駆使して、国会議員になり大臣になり都知事になった。機を見るに敏、男だったら立志伝中の人物ではないか?

男性政治家だってやっていることは大して変わらないことは著者もよーくわかっているはずだ。むしろ、安倍、石原親子、舛添、前原らをきりきり舞いさせたことが、ある種、痛快にも思える。

やがては墜ちるイカロスみたいな表現で話を締めているが、落ちないままいくのではないか彼女は。来年70歳でもあり、落ちないままの引き際も心得ているだろう。

ポピュリズムを自在に操り、そんな自分への疑問を抱かず、屈託もない、引くところは引いて自分自身は大けがをしない。大したもんだ。

まあ、彼女ののし上がっていった跡が、これまでと同じように焼け野原になる可能性はあるが、まあ東京都ならそれぐらいのダメージは受け止められるでしょう。

平成年間の政治史を物語風に読むという意味では意義ある一冊。小池百合子に関しては著者の過剰な敵意が逆効果。