El librero la Fontana

El librero la Fontana・ホンタナ(いずみ)氏の本棚「人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ 」(アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

Amazon Review

現代カタストロフ論

50年たつと過去の過ちを忘れてしまうだけ 現代カタストロフ論: 経済と生命の周期を解き明かす (岩波新書 新赤版 1953) 作者:金子 勝,児玉 龍彦 岩波書店 Amazon カタストロフ理論は1970年代~80年代に小さなブームがあったが、結局のところこの本がそうであ…

忘れる脳力

記憶と忘却のメカニズムーけっこうためになる! 忘れる脳力 脳寿命を伸ばすにはどんどん忘れなさい (朝日新書) 作者:岩立 康男 朝日新聞出版 Amazon 怪しい脳科学本と思ってしまいそうなタイトルだが、千葉大の脳外科の教授で脳の基礎研究の実績も十分な岩立…

破局 Audible

「内面のない男」の話 破局 作者:遠野 遥 Audible Amazon Audibleで聴きました。平成生まれの作家による初の芥川賞受賞という作品(2020)。 主人公・陽介は慶応の4年生でラグビー部で鍛え上げた肉体をもち、勉強もそこそこでき、同級生の彼女・麻衣子がいて…

本心

2040年の日本のリアルが感じられる 本心 作者:平野啓一郎 コルク Amazon 2022年に読み続けてきた平野啓一郎、彼の目下のところの最新長編「本心」(2021年5月刊行)を元旦から一気読み。平野啓一郎は2022は三島由紀夫の長大な評論にかかりきりだったようなの…

なりすまし(レビューその2)

「なりすまし」はさらに深い「アメリカ精神医療史」 なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験 亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ 作者:スザンナ・キャハラン 亜紀書房 Amazon さて、レビューその1を前提に「なりすまし」そのもののレビュ…

京都不案内

「京都はだれもが苦手」、そこから一歩進むには? 京都不案内 作者:森 まゆみ 世界思想社 Amazon せっかく関西に住んでいるのだからと、定期的に京都や奈良にでかけて寺を巡ったりしている。奈良は友人が住んでいたり、馴染みの呑み屋ができたりしたのだが、…

がんは裏切る細胞である 進化生物学から治療戦略へ

目からウロコ! 進化生物学者が「がん」を語ると腑に落ちることばかり がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ 作者:アシーナ・アクティピス みすず書房 Amazon 進化生物学者が「がん」について考えると現在の治療(特に「がん遺伝子パネル検査」…

小田嶋隆のコラムの向こう側

小田嶋氏の死後出版のコラム集 小田嶋隆のコラムの向こう側 作者:小田嶋隆 ミシマ社 Amazon コロナ禍やウクライナ危機の中で病死(2022年6月24日死去 享年65歳)した小田嶋隆氏が日経電子版に連載していた「ア・ピース・オブ・警句」2020年5月1日~2022年4月…

悪いがん治療

抗体医薬が巻き起こした「がん薬物治療」の混乱 悪いがん治療 作者:ヴィナイヤク・プラサード 晶文社 Amazon がん薬物治療の政策的な混迷をさまざまな視点から描いて非常に有益、ただし内容が高度なので医師以外の読者が理解することはかなり難しそう・・・…

2016年の週刊文春

もはや日本の正義を守るのは文春砲しかない! 2016年の週刊文春 作者:柳澤 健 光文社 Amazon 文春でたどる、昭和ー平成史。「田中角栄研究」「日本共産党の研究」「疑惑の銃弾(三浦和義事件)」、オウム真理教に酒鬼薔薇・・・500ページ一気読みだ。本誌「…

生きて、食べて、眠る部屋があって、ひとりになる時間があればそれでじゅうぶん 泡 作者:松家 仁之 集英社 Amazon 適応障害(?)ぽい、不登校男子高校生「薫」が、紀伊半島のどこか(たぶん白浜温泉)でジャズバー(&喫茶)をやっている大叔父「兼定」のと…

自分がおじいさんになるということ

2040年問題に向けて粛々と歳を重ねる 自分がおじいさんになるということ 作者:勢古 浩爾 草思社 Amazon 10年先行老人、勢古浩爾氏の最新老後エッセー集。この手の定年本、定年後本、老後本は買わないと思っていてもつい油断すると買ってしまう。たいした内容…

ある男

過去に翻弄された大人たち、未来を生きようとする子供たち ある男 (コルク) 作者:平野啓一郎 コルク Amazon 「マチネの終わりに」「ある男」「本心」と「分人主義後期三部作」らしい。 「マチネの終わりに」が良かったので期待したが、他人どうしが戸籍を交…

君の顔では泣けない

一気に読ませる、入れ替わり人生論・カフカ的 君の顔では泣けない (角川書店単行本) 作者:君嶋 彼方 KADOKAWA Amazon 映画「転校生」でひとつのジャンル化した「男女の入れ替わり」というモチーフだが、入れ替わった男女(坂下陸・水村まなみ)がもとに戻れ…

ツボちゃんの話 夫・坪内祐三

女たちに描かれる坪内祐三(去る者は日日に疎し・・・) ツボちゃんの話: 夫・坪内祐三 作者:佐久間 文子 新潮社 Amazon 2020年1月に病死した坪内祐三との生活を妻である佐久間文子が一冊の本にしたもの。坪内祐三の伝記と言ってもよく、これまで出版されて…

<弱者>の帝国 ヨーロッパ拡大の実態と新世界秩序の創造

なぜ西洋は「勃興」し、東洋は「没落」したのか? 〈弱者〉の帝国-ヨーロッパ拡大の実態と新世界秩序の創造 (単行本) 作者:ジェイソン・C・シャーマン 中央公論新社 Amazon 現在まで続くヨーロッパ(含むアメリカ)の世界覇権は歴史の中の一つのフェーズに過…

つげ義春 名作原画とフランス紀行

どんな場合でも、逃げるが勝ち(帯にあるつげ義春氏の名言) つげ義春 名作原画とフランス紀行 (とんぼの本) 作者:つげ 義春,つげ 正助,浅川 満寛 新潮社 Amazon つげ義春の漫画はなぜか定期的に読みなおしたくなる。そんな、文学的漫画家・つげ義春氏は作品…

遺伝子とは何か?

地味なタイトルだが、けっこう新しい! 遺伝子とは何か? 現代生命科学の新たな謎 (ブルーバックス) 作者:中屋敷均 講談社 Amazon もちろん「遺伝子とはDNAです」なんて単純な話ではない。歴史的な発見の経緯からDNAがあって必要に応じてmRNAが作られmRNAか…

ネオウイルス学

ネオウイルス学とは ネオウイルス学 (集英社新書) 作者:岩見 真吾,大場 靖子,川口 寧,佐藤 佳,澤 洋文,鈴木 信弘,高橋 英樹,朝長 啓造,中川 草,長崎 慶三,西浦 博,野田 岳志,古瀬 祐気,堀江 真行,牧野 晶子,松浦 善治,松野 啓太,村田 和義,望月 智弘,渡辺 登…

現代思想入門

どんなに生きても満足できる人生はない ってことですね 現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也 講談社 Amazon 人生が変わる哲学・・・うーん、こんなことを職業にしているのか哲学者。 やさしくわかりやすく書かれているので、デリダ、ドゥルーズ、フ…

壁とともに生きる わたしと「安部公房」

いま、安部公房を読み直したいと思えるか? 壁とともに生きる わたしと「安部公房」 (NHK出版新書) 作者:ヤマザキマリ NHK出版 Amazon テルマエ・ロマエのヤマザキマリさんによる安部公房のブックガイド。異色の組み合わせとも思えるが、世界を放浪してき…

EXTRA LIFE なぜ100年間で寿命が54年も延びたのか

もっと読まれていい、具体的な寿命延長史! EXTRA LIFE なぜ100年間で寿命が54年も延びたのか 作者:スティーブン・ジョンソン 朝日新聞出版 Amazon 寿命の延び(=ゼロ歳の平均余命の延び)は乳幼児死亡率の劇的減少(20%→1-2%)で起こった。20世紀の前半ま…

ヒトはなぜ「がん」になるのか 進化が生んだ怪物

「がん遺伝子パネル検査」もしょせんは商業主義・・ ヒトはなぜ「がん」になるのか; 進化が生んだ怪物 作者:キャット・アーニー 河出書房新社 Amazon 著者のキャット・アーニーはイギリスのがん研究基金「キャンサー・リサーチUK」の科学コミュニケーション…

推し、燃ゆ(Audible)

東横キッズになっていくの? 推し、燃ゆ 作者:宇佐見 りん Audible Amazon アイドルファンの応援行動が先鋭化して「おっかけ」なんて呼ばれた時代もあったが、今はそれらを含めたトータルな言葉が「推し」。若い女性のライフスタイルの一部に「推し活動(推…

さみしいネコ

「定年後エッセー」で癒される さみしいネコ【新装版】 作者:早川良一郎 みすず書房 Amazon 定年後の生活と意見や、平凡なサラリーマン(経団連の事務局にお勤めだったようだ)時代のあれこれの思い出を、柔らかに語る随想集。早川氏は1919年生まれで1979年…

エネルギーをめぐる旅 (Audible)

エネルギーから見たサピエンス全史 エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来 作者:古舘恒介 英治出版 Amazon 「エネルギー」版のサピエンス全史。「エネルギー」を軸におくことで、リアリティが高まり、かつ知らなかった内容も多いので、サピエンス…

ボクもたまには がんになる

三谷幸喜の前立腺がん経験記 ボクもたまにはがんになる 作者:三谷 幸喜 幻冬舎 Amazon 「鎌倉殿の13人」の脚本家、三谷幸喜氏の前立腺がん闘病記。といっても、実際にがんを発見し治療していたのは「真田丸」の始めの頃らしいので5年ほど前。この本で、初め…

エドワード・ホッパー作品集

寂しいあなたの姿を描くホッパーの世界を届けます。 エドワード・ホッパー作品集 作者:江崎聡子 東京美術 Amazon 家族でファミレスに来て、みんなそれぞれのスマホをのぞき込んでいるような孤独感、それがホッパー。どの絵のどの人物も、その人そのものとい…

がん検診は、線虫のしごと

直感的には「あやしい」話と思っていたら文春砲に撃たれたが、どうなる がん検診は、線虫のしごと 精度は9割「生物診断」が命を救う (光文社新書) 作者:広津 崇亮 光文社 Amazon 微小な寄生虫である線虫の嗅覚を研究していたという著者の広津氏。線虫の嗅覚…

生命を守るしくみ オートファジー

オートファジー、ブレイクするのかまだよくわからない 生命を守るしくみ オートファジー 老化、寿命、病気を左右する精巧なメカニズム (ブルーバックス) 作者:吉森保 講談社 Amazon 2016年、オートファジーでノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典氏、その…