El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

隠居すごろく Audible

人生には終わりはあっても 上がりはない

Audibleで聴きました。あれっ、まるで自分のこと?!

隠居後の人生再発見の物語。実際「定年」を迎えてみるとのんびりしたいという気持ちもある一方で、平均余命の20年間、遊んで暮らして退屈しないのかという思いもある。

現在はモラトリアム的に仕事を続けているので「隠居」を先送りしている状態。このモラトリアムも例えば70歳になってしまったら、老化がすすんでやりたいことができなくなるよ、という話もある。このあたりは「Die with Zero」の老後の金銭問題とも似ている。老後の時間の使い方問題とも言える。

一番いいのは、人生終盤の仕事に人生論的な意義=やり甲斐・生き甲斐を見出すことかな。経済的にも安定し、生きがいも感じられる。そういう仕事が見つけられれば一番いい。私は、今は、かなりそういう気分になってきたなーと、感じてはいる。

この時代小説「隠居すごろく」は、江戸巣鴨を舞台に、「なにもしないでのんびり隠居」への幻滅から「(生き)甲斐とは煎じ詰めれば、他人の役に立つこと」へと否応なしにシフトチェンジしていくご隠居さまを通して「上がらない」人生を描く。まあまあハート・ウォーミングなお話。死という終わりはあっても人生の「上がり」はない。