El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

中国の歴史11 巨龍の胎動 毛沢東VS鄧小平

中華人民共和国という専制帝国

現在に近いものを語ることの難しさは確かにある。本書は、2004年に単行本として刊行されたものを2021年に文庫化するに際して新たに1章加筆されており、習近平時代と新型コロナの始まりまでは書かれているがロシアのウクライナ侵攻(2022年2月)は当然予測もされていない。

中華人民共和国は毛沢東ー鄧小平ー習近平というラインで受け継がれる共産党王朝であるという考えはまあ正しいだろう。大澤真幸が「この世界の問い方」で書いていることは、まあ常識的な理解なのだ。

清帝国→中華民国(孫文・蒋介石)→中華人民共和国(毛沢東・鄧小平・習近平?)、ネーミングはどうあれ、過去にあった王朝の変遷と似ている。それはついには民主化という道を選ぶことができない何かが「中国」にはあるということ。あるいは、その巨大さを維持したまま民主的であることが、そもそも不可能なのかも。

毛沢東と鄧小平の怪物さに比べたら習近平ってどうなんだろう、何かやったというわけでもなく、権力闘争にのみ秀でているようなイメージ。そういう意味ではプーチンと同じか。

この先も民主化が起こらず一党独裁が続き、いつの日か北朝鮮のように世襲化したりしているうちに倒れる、というのが歴史の相場だろうが、そのスパンは100年単位かもしれず、私が目にすることはないような気がする。