El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

窯変源氏物語(6)

⑳朝顔・㉑乙女・㉒玉鬘・㉓初音

冷泉帝に実の父親が源氏であることを知られた、そこまでのプロセスそしてそこからの展開がシェイクスピアもびっくりの心理劇だった「薄雲」。そこから源氏の中年時代に向けて展開していく。

朝顔(あさがお)・・亡くなった式部卿の宮の娘で斎院の宮(=朝顔の宮)とはかって言いよってダメだった。源氏はこのチャンスにモノにしようとしきりに通うがピシャリと門前払いにーしだいに源氏の思うようにはいかなくなっていく。老女になった源典侍にも遭遇し、誰の上にも時は流れる・・がじわじわと描かれる。源氏のそうした行動に心痛める紫の上。源氏は夢に現れた藤壺への未練と惧れにさいなまれる。

乙女(おとめ)・・(かなり長い帖)前半は、源氏と故・葵の上の間にできた息子・夕霧の学問、恋愛が描かれ次第に世代交代していく。夕霧の恋の相手は、まずは内大臣(元頭中将)の娘・雲居の雁、それが内大臣に妨害されて次は、源氏が悪行をするときの手下・惟光の娘・藤内侍・・。親になれば親の思惑がある。後半は源氏が六条の四町相当の区画に造った四季を再現する四つの館、六条院が完成。それぞれの屋敷に東南(春):源氏と紫の上、北東(夏):花散里、南西(秋):秋好の中宮(斎宮の女御、里帰りのための屋敷)、北西(冬):明石の君が入る。二条の愛人マンションから戸建てにグレードアップ。まさに源氏のわが世の春とでも言おうか。

玉鬘(たまかずら)・・玉鬘十帖ー第22帖「玉鬘」から第31帖「真木柱」までの十帖は、第4帖「夕顔」で死んだ夕顔と頭中将の間の娘・玉鬘がヒロイン。全体の流れの中では唐突に登場した玉鬘が10帖にわたって主役となるため研究家の中にはメインストーリーの完成後に挿入されたエピソードではないかというものもあるようだ。その冒頭のこの帖では生後、乳母の一家に連れられて九州で成長した玉鬘が苦難の末に京にもどり偶然源氏に見出されて六条院(花散里のところ)に住むようになるまで。

初音(はつね)・・明けて正月の賀。六条院の各区画を巡り各区画の女・姫の姿を愛でる。なぜか明石の女のところでこの年最初の夜を過ごす(初寝)。その後、二条の愛人マンションへも。