El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

アマゾン五〇〇年 植民と開発をめぐる相剋

知らないことだらけ!これはすごい

専門分野ではないのに、なぜだか個人的に興味を持っているテーマがいくつかあって、関連書が出るとついつい手に取ってしまう。そのテーマの一つに「奴隷制度とラテンアメリカ世界(含ラテンアメリカ文学)」があり・・・

目次を見れば、もう読まずにいられないほど知らないことだらけ。ポイントを下記に列記。

①ポルトガルの時代(16世紀~19世紀前半)
 河口はポルトガル領、アンデス山脈近くはスペイン領となったアマゾン。ポルトガル人はスペインとポルトガルが同君連合(同じ君主のもとの別の国)になった期間を利用してアマゾン全域がポルトガルの支配下に。カトリック修道会(主にイエズス会)と入植者の先住民奴隷化をめぐる対立。ヴィエイラ神父の先住民保護ーと、いいながらイエズス会と植民者、両方が先住民労働力を奪い合っていた。過酷な労働や感染症で先住民の数は急減(16~17世紀)。
 ボンバル侯爵の専制政治ーアフリカ人奴隷の導入・先住民とポルトガル人の混血の促進・イエズス会の追放ー結果としてのアマゾン全域のポルトガル支配が確定(18世紀)。
 ナポレオンによるヨーロッパ支配でポルトガル王家がブラジルに移転。ブラジルの王国化と後継者をめぐる混乱。ブラジル独立派とポルトガル派の大内乱(カバナージェン)→人口減少による労働力不足(19世紀前半)。

②ブラジルのアマゾンへのアメリカの干渉(19世紀)
 北アメリカの奴隷解放→解放奴隷をラテンアメリカに移民させようというアメリカの作戦(モーリーやリンカーン)の挫折。南北戦争敗者のアマゾン移住とその失敗→人種混血を受け入れられず。

③ゴムブーム(20世紀初め)
 産業革命によるゴム需要で資本(ゴム男爵)も労働者(セリンゲイロ)もアマゾンに殺到。フォードのアマゾン理想郷建設と挫折。イギリスがパラゴムの木を秘密裏にマレーに移植してゴムブームの終焉。。

④日本人移民の歴史(20世紀)そして乱開発の21世紀
 このあたりは日本人にはおなじみ。さまざまな悲劇あり。

全体を通して、労働力希薄だがなんとかがんばってブームとなる作物が当たればやっていけるという土地がアマゾン。その労働力がどこから来るか(先住民・ブラジル内の難民・世界からの移住者)?作物(ゴム・コーヒー・ジュート・胡椒など)は何か?というような要素の組み合わせで歴史がすすんでいく。マラリアや黄熱病など人間の病気だけでなく植物の病気も多く、東南アジアやカリブの島にようなプランテーションが成功しにくいという条件もある。また作物のブームは長続きしない。人間の努力を吸い込んで無力化するブラックホールなのかアマゾン。

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