El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ラテンアメリカ五〇〇年 歴史のトルソー

ラテンアメリカの歴史を概括するには最適の一冊

大航海時代~産業革命~帝国主義という500年間をとおして、いかにして白色人種の世界簒奪が起こったのか?有色人種でありながら、白色人種が簒奪し発展させた世界でしか生きていけないということは、ラテンアメリカのインディオや黒人やメスティーソも日本人も同じ。そこからじわじわと巻き返すのか、それともアジアの巨竜が目覚めてガラガラポンがおこるのか・・・自分にとってはどんな状態が幸せなのか?そんなことを考えながら読む。・・・なんて大仰なことを書いたけど、この本、もっと端的に今に至るラテンアメリカの悲惨な歴史をざっくり知るには最適な本だ。

なぜ少数のスペイン人征服者によってアステカ帝国が滅ぼされたか・・・従来からある感染症説よりも、沿岸部のアステカによる被抑圧インディオ集団を利用しての反乱をうまく組織していった。その後にはカトリック教会や教団が進出。征服者は男ばかりなので急速に混血化(メスティーソ)が進む。征服者か被征服者か、という二元論ではなく、インディオ国家がじわじわと変質させられていく様子がよくわかる。

その後の、ヨーロッパからの独立は、白人による独立。インディアンがほぼいなくなったアメリカとは違い、インディオとメスティーソが人口の大多数を占めるラテンアメリカ独自の問題がある。

などなど、挙げていけばきりがないほど教えられることは多い。