El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

地霊を訪ねる もうひとつの日本近代史

大人の遠足・・・やっと読了

まず装丁(川瀬巴水の版画)がいい!

プラクティカルな経済学者・猪木武徳先生がPR誌「ちくま」に連載していた「地霊を訪ねる」シリーズが27回で終了して、それをまとめたものが出版された。言ってみれば「大人の遠足」である。主に専門分野(産業史?)である鉱山跡などを巡り、途中文学館などあれば寄り、という旅。真似してみたいという気もあるが、同好の士はいないなぁ。(最後の数章を残していたが一年がかりで読了)

  1. 伊那谷から中山道へ出る(長野)
    「夜明け前(島崎藤村)」・日夏耿之介・福田恆存
  2. 笛吹川から富士川沿いに身延山へ(山梨)
    「楢山節考(深沢七郎)」・石橋湛山
  3. 米沢から福島市を通り半田銀山跡を歩く(山形・福島)
    「代表的日本人(内村鑑三)」・「昭和史発掘(松本清張)」・芭蕉
  4. 津山から柵原鉱山、智頭宿をぬけて岩井温泉へ(岡山・鳥取)
    谷崎潤一郎・鳥取地震
  5. 福崎、養父を経て生野銀山へ(兵庫)
    柳田国男・山田風太郎・志村喬
  6. 河北町から北の尾花沢を訪ね山寺へ(山形)
    堀米四郎兵衛・最上徳内・ライシャワー
  7. 金銀の島、流謫の島、佐渡の霊気にふれる(新潟)
    日蓮・大久保長安・世阿弥
  8. 阿仁・尾去沢・小坂から十和田湖に出て五所川原へ(秋田・青森)
    花岡事件・久原房之介・太宰治
  9. 協和町鉱山跡から院内を歩き、湯沢温泉郷で休む(秋田)
    平田篤胤・「東洋経済(町田忠治)」・菅江真澄
  10. 日立から水戸、内原を通り袋田温泉へ(茨城)
    久原房之介・小平浪平
  11. 熊谷から深谷を歩き秩父鉱山へ(埼玉)
    妻沼聖天山(斎藤実盛)・渋沢栄一・秩父事件
  12. 足利から富井(篠井)鉱山跡を通り白河の関へ
    足利学校・足尾銅山・田中正造・白河の関
  13. 登米、栗原から鶯沢の細倉鉱山へ(宮城・岩手)
    伊達三傑(高橋是清・後藤新平・斎藤實)
  14. 神岡鉱山から白山中宮温泉を経て尾小屋鉱山へ(岐阜・富山・石川)
    白山・高岡瑞龍寺・一向一揆・斎藤実盛
  15. 松阪から尾鷲、十津川村、新宮をめぐり高野山へ(三重・和歌山)
    小津安二郎・本居宣長・英国人捕虜・佐藤春夫・高野山
  16. 別子銅山を再訪し、西条から市之川鉱山へ(愛媛)
    別子銅山・初代住友総理人広瀬宰平・鷲尾勘解治・川田順
  17. 安芸高田の神楽を観て、奥出雲のたたら山内を訪ねる(島根)
    たたら製鉄・竹下登・俵國一・日刀保たたら
  18. 陸前高田市から気仙沼、そして鉄都・釜石へ(宮城・岩手)
    東北の製鉄・釜石への艦砲射撃・啄木
  19. 盛岡から八幡平の松尾鉱山跡を見て国見峠へ(岩手)
    奥羽越列藩同盟とその後・原敬
  20. 筑豊三郡を巡り、秋月城址へ(福岡)
    筑豊三炭田・古都秋月
  21. 久留米から三池を訪ね、天草へ(福岡)
    三池炭田・北原白秋・田原坂(西南戦争)
  22. 苫小牧から夕張・三笠の炭鉱跡を歩き五稜郭へ(北海道)
    夕張炭田・空知集治監囚人労働・五稜郭
  23. 小諸から小串鉱山、小布施から米子鉱山へ(長野)
    佐久平龍岡城・上田城・松代大本営
  24. 伊豆の鉱山を訪ねるー土肥・大仁・蓮台寺(静岡)
    修善寺の漱石・川路聖謨
  25. 白神山地東の尾太鉱山跡から八甲田山麓へ(青森)
    八甲田山・棟方志功と太宰治
  26. 石見銀山跡を再訪。柿本神社を拝観し津和野へ(島根)
    石見銀山・柿本神社・津和野・鷗外
  27. 永野鉱山跡から菱刈鉱山を経て、知覧へ(鹿児島)
    菱刈鉱山・郷・島津斉彬

(新刊購入本)