ウェルベック最新作 上巻はイントロ
数年後のフランスを舞台に、財務大臣ブリュノの補佐官ポールが主人公。その妻プリュダンスとの関係悪化と修復、父エドゥアールの脳梗塞と植物状態と後妻マドレーヌ、妹セシルとその夫エルヴェ、弟オーレリアンとその妻インディ。それぞれのカップルの状況変化を基盤に、次期フランス大統領選挙と奇妙なテロ活動の連続という事態にこれらの登場人物がどう関わっていくのか・・・・。というところで下巻に続く。
ウエルベックの作品の特徴として現代社会への風刺がストーリーとは独立して結構面白い。感心したものを抜き書きしておくと・・
ポールの父は、同世代のすべての男たちと同じく、そうした仕事(家事)については完全に無能だったー次の世代が能力を高めたわけではなくて、女たちも能力を失って、なし崩し的に男女平等がなりたった結果、富裕層や、小金のある世帯は家事を外注し(ちょうど企業が清掃と警備を下請けに出すように)、そうでない世帯は徐々に険悪なムードになって、虫がわき、全般的に不潔になった。(P66)
人生とは事務的、技術的な困り事の連続で、そこにときおり健康問題が介入する。ある年齢になると健康問題がほかの問題を押しのける。そこで人生は一変し、ハードル走めいたものになるーますます頻繁、かつ多様な検査によって、臓器の状態が注意深く観察される。結果、異常なしか、少なくとも許容範囲とされるうちに、やがて別の判定が下される。そこで人生はまたも一変し、程度はまちまちでも、長く苦しい死へのレースとなる。(P239)
ラクサネーから一人の男として見られる、ただそれだけで、ブリュノにはよい効果がもたらされていた。ブリュノ自身が男であることを再認識していた。ラクサネーは生き物が性的なのはあたりまえという考え方を隠そうともせず、それは信じられないほど、ほっとさせられることだった。(P293)
福岡県の久留米に出かけるので下巻はKindleで読むことになる。