El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

燃える部屋(上・下)

ハリー・ボッシュ シリーズ (17) 2014年 ボッシュ64歳の設定

ついにボッシュの年齢が読み手である私の実年齢に到達。同じように定年延長制度のおかげで好きな仕事に精を出しているわけだ。そして、残り時間がそれほど長くはないというのも似た者同士。

最初の「ナイト・ホークス」(1992)から22年、犯罪捜査も大きく変化した。DNA鑑定、指紋や弾痕・条痕のデータベース化が古い未解決事件に新しい光をあてる。実際の捜査の場面では監視カメラ映像、検索サイトやSNSによる個人の割り出し、携帯電話の通信傍受や位置検索など多彩な手法が出現しそれに戸惑うボッシュの姿も。どの世界も同じ。

そんなことを残り50ページまでは楽しんでいた。しかし、そこから急に怒涛の展開であっという間に終局へ。そこまでの積み上げにくらべてあまりにも急で安易な終幕なのでは・・・・。コナリーは執筆当時58歳くらいなので老いたわけでもなかろうが、なんだか予定ページ数に収まりきれなくなっての苦肉の策という感じもする。

ともあれ、LADPを離れることになったボッシュ、次作からは腹違いの弟であるリンカーン弁護士ハラーと絡みながらのストーリーになるようだ。現時点で残り6作。