El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

本の雑誌 2022年6月号 結句、西村賢太

西村賢太 追悼号。連載中に死去した西村賢太と坪内祐三について

西村賢太(1967年7月12日~2022年2月5日)2月の突然の訃報から3か月、本の雑誌6月号は「特集 結句、西村賢太」がほぼ100ページと追悼号。

西村賢太は「一私小説書きの日乗」というタイトルの日記を本の雑誌に連載しており、3月号の1月7日分が最後。年末の12月29日から小田原、30日熱海、31日大阪、新年になって3日再び小田原と飲酒しながらのあてどなき旅。そして7日に能登七尾で藤澤清造の月命日の法要。・・・ここで日記が終わる。何か心の欠落を埋めるかのような活動量と飲酒量。コロナの冬に過飲酒と過活動の先に死・・・。

一方、坪内祐三(1958年5月8日~2020年1月13日)。2年前に死去した坪内祐三も、同じように本の雑誌に「坪内祐三の読書日記」を連載していた。死去する20日ほど前の最後の日記にはいつもどおり古本屋巡り・・・。1月13日に死去。本の雑誌、2020年4月号が追悼号「さよなら坪内祐三」である。

西村賢太の2020年3月16日分には「ユリイカ」に坪内祐三の追悼文を書いたとある。

何年ものあいだ折に触れ読んできた二人が相次いで亡くなり、それが本の雑誌の上でシンクロして、なんとも切ないけれどーこれが人生か。