El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

エドワード・ホッパー作品集

寂しいあなたの姿を描くホッパーの世界を届けます。

家族でファミレスに来て、みんなそれぞれのスマホをのぞき込んでいるような孤独感、それがホッパー。どの絵のどの人物も、その人そのものというよりは、社会が求めたその人の役割を演じているに過ぎない・・・そんな現代的な寒々しさを感じる。

ゆえに、現代的なリアルで酷薄な社会を描く小説などに雰囲気がぴったり。マイクル・コナリーの「ボッシュ」シリーズでも第1巻にナイト・ホークス(翻訳版のタイトルでもある)の絵が登場する。やりきれない一日を過ごした後、家に帰っても一人、グラスにバーボンを注いで口に運ぶ。それがまさにホッパーの世界。

ここ数年、ホッパーの絵をモチーフにした小説集などが出版されていたのにホッパーの作品集は原書しか入手できなかった。そこに、A4というサイズで画集らしい開きやすいページとじのこの本、江崎聡子さんの「エドワード・ホッパー作品集」が登場。速攻で入手しました。

ああ、ページをめくるたびに、やはり不穏な寂寥感につつまれます、ホッパー。他の絵にないこの不穏な感じはなんだ!?