El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

2022-01-01から1年間の記事一覧

双調平家物語(11) 平家の巻(承前)

平清盛、急上昇のその理由(わけ) 双調平家物語11 平家の巻(承前) (中公文庫) 作者:橋本治 中央公論新社 Amazon 保元の乱・平治の乱の後、価値観がひっくり返ったのに旧い価値観も引きずられている時代。天皇・上皇・摂関家・周辺藤原家そして平家・・…

第三次大戦はもう始まっている

やっと日本でもロシアよりの論評が・・・トップ・ガン虚し 第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書) 作者:エマニュエル・トッド 文藝春秋 Amazon 半分くらいの日本人も、現在のウクライナの膠着状態やロシア経済がガタつかないことを見て当初の「ロシア…

生命科学的思考

セラノス事件的うさん臭さ ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考 (NewsPicksパブリッシング) 作者:高橋祥子 ニューズピックス Amazon ジーンクエストという民間遺伝子解析サービスを起業した京都大学農学部を10年前に卒業した女性が著者。遺…

空白を満たしなさい

分人主義小説の真骨頂 空白を満たしなさい(上) 作者:平野 啓一郎 Audible Amazon 空白を満たしなさい(下) 作者:平野 啓一郎 Audible Amazon Audibleで聴きました(上下で17時間)。聴いている途中で、NHKでドラマ化され放映されたがやはり原作のほうが深い。…

自分がおじいさんになるということ

2040年問題に向けて粛々と歳を重ねる 自分がおじいさんになるということ 作者:勢古 浩爾 草思社 Amazon 10年先行老人、勢古浩爾氏の最新老後エッセー集。この手の定年本、定年後本、老後本は買わないと思っていてもつい油断すると買ってしまう。たいした内容…

ロボット手術と前立腺がん・ロボット手術と子宮がん

術者としては経験できなかったロボット支援手術の今をまとめておきたい ロボット手術と前立腺がん (祥伝社新書) 作者:大堀 理 祥伝社 Amazon ロボット手術と子宮がん (祥伝社新書) 作者:井坂惠一 祥伝社 Amazon 2冊とも祥伝社新書でほぼ同じ体裁、著者の二人…

死にかた論

もっと科学的になってほしい。 死にかた論 (新潮選書) 作者:佐伯 啓思 新潮社 Amazon 発達した脳が「自己」というものを持ったために「死」が「自己の喪失」となってしまった。「自己」が「自己の喪失」を理解できない、納得できない、それはまあ当たり前の…

ある男

過去に翻弄された大人たち、未来を生きようとする子供たち ある男 (コルク) 作者:平野啓一郎 コルク Amazon 「マチネの終わりに」「ある男」「本心」と「分人主義後期三部作」らしい。 「マチネの終わりに」が良かったので期待したが、他人どうしが戸籍を交…

古寺行こう(4)興福寺 行ってみた

国宝館のガラスケース無しの距離感は近い! 隔週刊 古寺行こう(4) 興福寺 2022年 4/26 号 [雑誌] 小学館 Amazon 毎月のように奈良に行っているので当然、興福寺周辺を歩いている。国宝館は面積比の国宝の数が多い、つまり国宝密度がやたら高い。今回、久しぶ…

君の顔では泣けない

一気に読ませる、入れ替わり人生論・カフカ的 君の顔では泣けない (角川書店単行本) 作者:君嶋 彼方 KADOKAWA Amazon 映画「転校生」でひとつのジャンル化した「男女の入れ替わり」というモチーフだが、入れ替わった男女(坂下陸・水村まなみ)がもとに戻れ…

ブックガイド(102)―長寿への人類史―

ブックガイド(102) https://uuw.tokyo/book-guide/ EXTRA LIFE なぜ100年間で寿命が54年も延びたのか 作者:スティーブン・ジョンソン 朝日新聞出版 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプ…

ツボちゃんの話 夫・坪内祐三

女たちに描かれる坪内祐三(去る者は日日に疎し・・・) ツボちゃんの話: 夫・坪内祐三 作者:佐久間 文子 新潮社 Amazon 2020年1月に病死した坪内祐三との生活を妻である佐久間文子が一冊の本にしたもの。坪内祐三の伝記と言ってもよく、これまで出版されて…

ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか 生物の死4つの仮説

なぜ死ぬのかに関する4つの仮説(やや冗長) ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか (新潮選書) 作者:更科 功 新潮社 Amazon ①自然淘汰的死亡説・・・自然淘汰を繰り返すためには世代ごとの死滅が必要。ある世代の100分の1が次の世代となり99%は淘汰されるとすると死…

マンガでわかるジャズ

あれっ!?、ジャズって同世代だったのか マンガでわかるジャズ: 歴史からミュージシャン、専門用語などを楽しく解説! 作者:山本 加奈子 誠文堂新光社 Amazon マイルス・ディヴィスが1926年生まれの1991年没。1926年は昭和元年、ということはマイルス・デ…

私とは何か 「個人」から「分人」へ

『マチネの終わりに』の蒔野と洋子の愛とはなんだったのか?その相手といるときの自分、について考える。 私とは何か 「個人」から「分人」へ (講談社現代新書) 作者:平野啓一郎 講談社 Amazon 大仰な哲学書のようなタイトル。しかし内容は、「自己」「他者…

マチネの終わりに

大人の恋愛と芸術と人生と マチネの終わりに(文庫版) (コルク) 作者:平野啓一郎 コルク Amazon 久しぶりに小説で感動。途中、恋の邪魔立てがはいってメロドラマ展開するのかと思って投げ出しそうになったが、そこからの男女の人生描写がすばらしく、平野啓一…

メスを超える 異端外科医のイノベーション

腹腔鏡手術やダ・ヴィンチ手術を支える医療VR メスを超える―異端外科医のイノベーション 作者:杉本 真樹 東洋経済新報社 Amazon 外科医療でこの30年間一番変わったのは腹腔鏡か胸腔鏡による鏡視下手術の劇的な拡大だろう。最初は胆嚢摘出術を腹腔鏡手術でや…

<弱者>の帝国 ヨーロッパ拡大の実態と新世界秩序の創造

なぜ西洋は「勃興」し、東洋は「没落」したのか? 〈弱者〉の帝国-ヨーロッパ拡大の実態と新世界秩序の創造 (単行本) 作者:ジェイソン・C・シャーマン 中央公論新社 Amazon 現在まで続くヨーロッパ(含むアメリカ)の世界覇権は歴史の中の一つのフェーズに過…

つげ義春 名作原画とフランス紀行

どんな場合でも、逃げるが勝ち(帯にあるつげ義春氏の名言) つげ義春 名作原画とフランス紀行 (とんぼの本) 作者:つげ 義春,つげ 正助,浅川 満寛 新潮社 Amazon つげ義春の漫画はなぜか定期的に読みなおしたくなる。そんな、文学的漫画家・つげ義春氏は作品…

変容

「変容」している自分に気づく2度目の「変容」 変容 (岩波文庫) 作者:整, 伊藤 岩波書店 Amazon 短期間ながら北海道(富良野・札幌)を旅行中。移動時間(札幌ー富良野は2時間以上かかる)を利用して北海道出身の作家の作品を読もうということで伊藤整(い…

訃報 小田嶋隆氏 逝く

同い年、65歳のコラムニスト、小田嶋隆氏が亡くなった。「わが心はICにあらず」は昔々月刊ASCIIに連載されていたのではなかったか。80年代、30歳前後から何かと文章を目にしてきたので、同時代人という感覚。まあ、歳が同じなのであたりまえだが。 下記の日…

遺伝子とは何か?

地味なタイトルだが、けっこう新しい! 遺伝子とは何か? 現代生命科学の新たな謎 (ブルーバックス) 作者:中屋敷均 講談社 Amazon もちろん「遺伝子とはDNAです」なんて単純な話ではない。歴史的な発見の経緯からDNAがあって必要に応じてmRNAが作られmRNAか…

古寺行こう(2)東寺 行ってみた

やはり「古寺行こう」は必携! 隔週刊 古寺行こう(2) 東寺 2022年 3/29 号 [雑誌] 小学館 Amazon 梅雨のさなか、ギリギリ降らない程度で涼しい。「古寺行こう」Vol.2だった東寺に行ってみた。少しずつ人出が増えているがまだまだ大丈夫。 東寺といえば五重塔…

ブックガイド(101)―コロナワクチン・光速の開発力―

アンダーライティングのためのブックガイド(101) 再開しました mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来 作者:ジョー ミラー,エズレム テュレジ,ウール シャヒン 早川書房 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知…

インターセックス

やや陳腐なサスペンス仕立てだが、性分化障害についての理解は深まる インターセックス (集英社文庫) 作者:帚木蓬生 集英社 Amazon 帚木蓬生は医学・医療がらみのサスペンスをいくつか書いているが「インターセックス」もその一つ。インターセックスとは「肉…

ネオウイルス学

ネオウイルス学とは ネオウイルス学 (集英社新書) 作者:岩見 真吾,大場 靖子,川口 寧,佐藤 佳,澤 洋文,鈴木 信弘,高橋 英樹,朝長 啓造,中川 草,長崎 慶三,西浦 博,野田 岳志,古瀬 祐気,堀江 真行,牧野 晶子,松浦 善治,松野 啓太,村田 和義,望月 智弘,渡辺 登…

双調平家物語(10) 平治の巻(承前)平家の巻

平治の乱の一カ月を描くのに300ページ!ちょっと執着しすぎ? 双調平家物語 (10) 平治の巻(承前) 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon 平治の乱は平治元年(1159年)12月に始まり、その年のうちにはほぼ決着がつき、翌平治2年(1160年)1月上旬には首謀者・藤…

65歳からの京都歩き

何気なく読んで、そうか京都にも通わなくては・・・と気づく 65歳からの京都歩き 作者:永江朗 京阪神Lマガジン Amazon ライター永江朗が京都にセカンドハウスを構え、東京ー京都、二重生活をしていることは知っていた。その永江がエッセイ風に書いた京都ガイ…

世界2.0 メタバースの歩き方と創り方 (Audible)

この本に書かれているレベルであれば・・・メタバースってフェイクっぽい 世界2.0 メタバースの歩き方と創り方 作者:佐藤 航陽 Audible Amazon 著者がメタバース関係の事業やっているということで利益相反ありありで、勝手に盛り上がられてもリアリティがな…

医師が死を語るとき 脳外科医マーシュの自省

患者の死・筆者の死・そして読者としての私の死を巡りながら味わう自伝的エッセイ 医師が死を語るとき――脳外科医マーシュの自省 作者:ヘンリー・マーシュ みすず書房 Amazon 「安楽死が認可されていない場合に私たちが迫られる選択は、すぐに悲惨な死を迎え…