El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ロボット手術と前立腺がん・ロボット手術と子宮がん

術者としては経験できなかったロボット支援手術の今をまとめておきたい

2冊とも祥伝社新書でほぼ同じ体裁、著者の二人も東京医大で同僚だったらしく、おそらくこのあたりが日本のロボット支援手術=ダ・ヴィンチ手術のパイオニアと言えるのだろう。胸腔鏡手術・腹腔鏡手術は手術臓器そのものよりもそこにいたるアプローチが過大になる胆嚢摘出や気胸から始まりそこまでは私も経験がある。

その先に進んだ時、特に視野のよくない骨盤内臓器の手術においても胸腔鏡手術強みを発揮するはずだが、骨盤内は操作のために空間を十分にとれないという現実があった。それを克服したのがロボット支援手術。いわば、脳外科や心臓外科でやる拡大鏡下手術と胸腔鏡手術・腹腔鏡手術を組み合わせ、さらに捜査そのものを遠隔コンソールから行う。とにかくよく見える、細かい操作ができる。

現在12の手術においてロボット支援手術が保険収載されている。しかし、ダ・ヴィンチ1台数億円に数千万円の保守費用がかかる。さらに保険点数が非ロボットの胸腔鏡手術・腹腔鏡手術と同じに設定されているため、ダ・ヴィンチは症例数の多い大学病院規模の病院にしか導入されず、それがまた技術の伝播を妨げ一部施設による寡占化が進んでいるようだ。

日本ロボット外科学会のwebsiteによれば「Hinotori」という国産手術支援ロボットができているようで期待したい。