El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

生命科学的思考

セラノス事件的うさん臭さ

ジーンクエストという民間遺伝子解析サービスを起業した京都大学農学部を10年前に卒業した女性が著者。遺伝子や進化論的考え方を日々の生き方に適用して「ビジネスと人生の見え方が一変する」なんて話なのだが、「遺伝子に操られて性犯罪を引き起こす」というトンデモな話と似たり寄ったり。

人間の社会行動と遺伝や進化の関りは、このように誤用され、ときには優性思想のように悪用されてきたわけで、この本もまたそのレベルに逆もどりしているのではないか。

意図してなのか無知ゆえなのかわからないが、進化と進歩の誤った同一視から生まれた社会ダーウィニズムを焼き直して、口当たりよくビジネス論や人生論に落とし込んでおり、うさん臭さいと感じる。

理系女子の起業家でうさん臭さといいエリザベス・ホームズの事件を想起させる。

進化と人間行動=「進化人間行動学」についてはきちんと専門の学者が書いた教科書を読むべき。まず社会ダーウィニズムを冷静に批判するところから始まるべき。