El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

<弱者>の帝国 ヨーロッパ拡大の実態と新世界秩序の創造

なぜ西洋は「勃興」し、東洋は「没落」したのか?

現在まで続くヨーロッパ(含むアメリカ)の世界覇権は歴史の中の一つのフェーズに過ぎず、中国やインドの台頭で次のフェーズに入っていく可能性はある・・そうなったら世界史の教科書でも例えば、「ヨーロッパの世界制覇とその終焉」「中国・インドの時代」と続いていくのだろうーというのが私の得た新しい見方。

序論ー軍事革命と最初の国際システム

原著者のレトリックのせいか、序章はいったい何がいいたいのかがサラっと読んだだけではわかりにくい。なので、序章は最後まで読んだ後に読む、あるいは訳者の解説を読んだ後に読むとよい。

ヨーロッパが世界の覇権をにぎった原因がヨーロッパ内部の戦争による軍事技術の発達によるものだという説「軍事革命論」を否定しながら、ではヨーロッパ覇権の真因は?と次章に入っていく。

第1章ーイベリア半島の征服者と歎願者たち

スペイン・ポルトガル人が中央アメリカ~南アメリカを征服したのは持ち込んだ疫病によるところ大であり、コルテスやピサロなどのコンキスタドールはまったく訓練された軍事組織ではなかった。また、アステカやインカの帝国は常に内紛問題を抱えておりその内部抗争をうまく利用できた。

アメリカのアステカやインカ、アジアのインドや中国など大帝国は多民族帝国であり内紛から瓦解する要素があった。ヨーロッパはそこまでの帝国がそもそもなく、地形もあって、いわゆる国民国家が形成されていた。

第2章ー主権会社と東洋の帝国

オランダ東インド会社VOCとイギリス東インド会社IOC。国民国家であるがゆえに利益共同体としての主権会社による貿易独占という目論見が実行された。同時にアジアの帝国の徴税をはじめとする統治機構に食い込んでいき実効支配していく。

ヨーロッパが武力でゴリゴリと侵略していったわけではない。お互いに利益になるから商売させてくださいと庇を借りて母屋をとる。インドの民衆もそもそも帝国への忠誠心などない人々なので、支配者がムガール皇帝だろうがイギリス女王であろうが差がなく、その時々で自分の利益になる方をえらんだ。

第3章ーアジアによるヨーロッパ侵略を文脈に位置づける

オスマン帝国のヨーロッパ侵略からも軍事革命論は否定される。日本の鉄砲伝来を見ても明らかなように、便利な武器はあっという間に流通してしまうので、軍事革命論が正当化されるほどの差がそもそもできない。

結局、オスマン帝国も内部分裂や上層部の不正、税収の分散化などソフトな方面で次第に勢力低下していった。

結論ーいかにしてヨーロッパ人は最終的に勝利したのか(また最後に敗北したのか)

アジアの帝国はインドも中国(清)もかなり成熟して、汚職がはびこり、派閥の争いも激しいところをうまく利用されてヨーロッパに支配されてしまった。しかし、軍事革命論的な部分は少なく、内紛や、個別集団の利益追求が結果的に国を亡ぼすということが起こった。

そうしてヨーロッパが作ったアジア・アフリカの植民地帝国にしても1945年以降に崩壊していくわけで。覇権のターンオーバー・寿命というものは厳然とある。そのターンオーバーのタイミングがヨーロッパの大航海時代とインド・中国の帝国の腐敗期とうまいことかさなってしまった結果起こったのが西洋による東洋の圧倒・・・と私たちが思っているもの。

しかし、世界の西洋化が世界史における大転機というわけではない。この先、インドや中国が覇権国家になって帝国化する可能性はある。ヨーロッパ人が「世界の指導者」みたいな顔をしているのはここ数世紀のたまたまの現象。

ざっと、そんな感じかと思ってレビューしてみたが・・どうもまだまだ。なぜなら、本文200ページそこそこなのに、書いてある情報量があまりにも多すぎてうまく咀嚼できていない。