El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

マチネの終わりに

大人の恋愛と芸術と人生と

久しぶりに小説で感動。途中、恋の邪魔立てがはいってメロドラマ展開するのかと思って投げ出しそうになったが、そこからの男女の人生描写がすばらしく、平野啓一郎の才能を感じた。

イラク戦争~東日本大震災の時代をも細密に描きながら、そこを舞台に人生の蹉跌と再生の物語。著者が言うところの分人主義を具現化したものだ。

10年ほど前に毎日散歩していた東京の大きな公園の一角で、子供を遊ばせている平野啓一郎氏と奥さまに遭遇したことがある。そんな家族の日常がこの小説の子育て場面の描写に生かされているように思える。

同タイトルのギター演奏CDがApple Musicで聴けるのでぜひそれを聴きながら読みたい。 

福田進一の「マチネの終わりに」をApple Musicで

また、福山雅治と石田ゆり子を主人公に映画化もされているが、小説がすばらしいのでまずは原作を読んだほうがいい。


マチネの終わりに