なぜ死ぬのかに関する4つの仮説(やや冗長)
①自然淘汰的死亡説・・・自然淘汰を繰り返すためには世代ごとの死滅が必要。ある世代の100分の1が次の世代となり99%は淘汰されるとすると死を前提にしなければ膨大な数の祖先が必要。繁殖と死がコンビになることで一定数で継代できる。
②種の保存説・・・若い世代に道を譲るために死ぬ。
③生命活動速度論・・・生きている間に使えるエネルギーは一定なので死ぬ。
④進化論的寿命説・・・寿命は死亡率によって作られた。外因死の確率が高ければ若いうちに繁殖にエネルギーを集中するためその後死ぬ。
という、なぜ死ぬのかに関する4つの仮説を挙げているのだが、結局は①がメインでそれに④と②もやや加味されるという感じだろうか。更科氏の著作はどうも脱線が多くて読みづらいし、読後もピンとこない。用語としては勉強になったのは
ルカ(LUCA=Last Universal Common Ancestor)・・・ある時点で生息するすべての生物の共通の祖先。ルカの解説にかなりのページがあてられている。
散逸構造・・・まあ動的平衡に近いのか。出入りがありながらも一定の形態と機能を維持している状態。
なぜ死ぬのかは、以前読んだ「生物はなぜ死ぬのか」のほうがコンパクトでわかりやすい。同種の本が多いだけに差別化が必要。
(以下、出版社情報 https://www.shinchosha.co.jp/book/603881/)
約40億年前に誕生した初期の生物に、寿命はなかった。にもかかわらず、死ぬことは必要だった――生物は進化し、多様性を生み出し、複雑な構造となったからだ。生物は生き残るため、寿命を得たのである。「死」に関する4つの仮説の歴史的な盛衰を通して、生物の「寿命」がどのように生まれたのかをひもといていく。
- 目次
- まえがき
- 第1章 自然淘汰的死亡説
不思議な老人/不思議は存在する/奇跡を生み出す自然淘汰/生命が偶然生まれるのは無理/ホイルの計算/下手な鉄砲は数を撃っても当たらない/無限には死ねない/地球の生命の起源/ルカとは何か/交代するルカ/未来のルカ/遺伝子の重複/ルカが最初の生物でない証拠/遺伝子の水平伝達/水平伝達の制限/転写や翻訳に関する遺伝子/転写と翻訳が重要/ゲノムについて/ルカのイメージ/大切なのは遺伝システム/爆発したテレビ/椅子取りゲーム/平和な生存闘争/標準装備されている死/次の世代に受け継がせないための死/地球の生物の分け方/単系統群とは - 第2章 生物の基本形は不死
グラスの水と川の水/ガスコンロの炎/散逸構造としての生物/生物の冷凍保存/ラムダファージというウイルス/ネズミの思考実験/延長された表現型/時間と空間のなかの生と死/リボソームの有無/あいまいな生と死の境界/生命の起源について/熱水噴出孔/ロストシティ/「一部が死ぬ」から「すべてが死ぬ」へ - 第3章 種の保存説
メスがオスを食べる/子が母親を食べる/炎の子/炎は進化しない/もやウィンの言葉/変化しない者が生き残る/変化した者は生き残れない/ヴァイスマンの考え/哺乳類の子殺し/保険の乗り換え/メスによる子殺し/昆虫における子殺し/次の世代のために死ぬのは矛盾 - 第4章 利他行動による死
ミツバチの社会/子を残さない働きバチ/ダーウィンの慧眼/血縁淘汰/遺伝子による説明/血縁淘汰はヒトでも働くか/重要なのは適応度の増加/ヒトとチンパンジーの血縁度?/虫歯のオオカミ/虫歯遺伝子は増えていくか/利他行動の起源の一つ/種のための進化は難しい/集団の数は少ない/単細胞生物と多細胞生物/多細胞生物と社会/多細胞生物とミツバチの社会/分化するための目印/エピジェネティクス/ミツバチのエピジェネティクス/相関関係と因果関係/キイロタマホコリカビの裏切り/ミツバチの裏切り/細胞と個体 - 第5章 進化論的寿命説と生命活動速度論
多細胞生物は単細胞生物に敵わない?/単純な多細胞生物を考える/多細胞生物が進化する可能性/最古の多細胞生物/多細胞生物に寿命がある理由/関節リウマチ/おばあさん仮説のもう一つの意味/おばあさん仮説は正しいか/寿命遺伝子/アリストテレスの考え/ルブナーの発見/生命活動速度論/酸化ストレス説/生命活動速度論のその後/たくさんの例外/ピートのパラドックス/大きな動物はがん抑制遺伝子が多い/進化論的寿命説/進化論的寿命説の実証 - 第6章 複雑なものの死
人類はなぜ長生きか/哺乳類の歯/複雑なものは何回も作れない - あとがき
- 主な参考文献