El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

双調平家物語(11) 平家の巻(承前)

平清盛、急上昇のその理由(わけ)

保元の乱・平治の乱の後、価値観がひっくり返ったのに旧い価値観も引きずられている時代。天皇・上皇・摂関家・周辺藤原家そして平家・・・それぞれが覇を競うというよりは、なんとなく混乱の後でぼーっと日々を過ごしているうちに、平清盛のところにいろいろ流れ込んでいった。

特に摂関家の財産の多くが相続という形で実質的に清盛のもとに転がり込んでくる展開(史実かどうかはわからないが)、さらに院政期にはあれだけこだわっていた天皇の母の家柄問題がまるで無視されるかのように平家の都合のいいようになっていく展開、この二つが平清盛をぐんぐんと押し上げていく。ある種のショック・ドクトリン(惨事のあとに人々が呆然としている間に有利な立ち位置についてしまう)でもあったのか。

しかし、平治の乱(1159年)から20年かけて築いた栄華が鹿ケ谷の陰謀(1177年)から10年もたずに完全に滅亡(壇ノ浦の戦い:1185年)するのだから、平家の時代は期間的には大正時代の長さだったのかと。

平治の乱(1159年)から平家全盛期の終わりの始まり鹿ケ谷の陰謀(1177年)までの登場人物の年齢変化(横線は1177年時点で死去)。

  • 後白河上皇(33)→(51)
  • 二条天皇(17)
  • 美福門院(43)
  • 信西(54)
  • 平清盛(42)→(60)
  • 藤原信頼(27)
  • 藤原忠通(63)
  • 源義朝(37)
  • 源義平(19)
  • 源頼朝(13)→(31)
  • 牛若(源義経)(1)→(19)