El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

双調平家物語(8) 乱の巻(承前) 平治の巻

リアリスト藤原信西により歴史が加速

「双調平家物語」は途中で話が膨らんで、第五巻から始まった「保元の巻」だが、「保元の乱」が起こるのは第八巻。

自分の妻(待賢門院)と祖父(白河帝)の間の子を自分の子(崇徳帝)として帝位に付けざるを得なかった鳥羽帝(院)だが、白河院が死に鳥羽院政期になると露骨な崇徳いじめ。

崇徳を退位させ、自分と美福門院の間にできた近衛天皇に即位させ、鳥羽院(一院)と崇徳院(新院)のダブル院政(実権は鳥羽院)。

一番若い近衛天皇が先に死んだため、その後継として鳥羽院の子・後白河天皇が即位し緊張感が高まっていた。そこ鳥羽院が死去したために朝廷・後白河天皇 VS 新院・崇徳上皇という対立軸があった。

一方、摂関家藤原氏の中で、前関白藤原忠実・左大臣藤原頼長 VS 関白藤原忠通という後継者争いの対立軸があった。鳥羽院の死をきっかけに藤原忠通が藤原忠実・藤原頼長を追い落とそうと、天皇家の対立軸を利用して仕掛けたのが保元の乱

源氏や平氏は? 本来源氏は朝廷(天皇)付き、平家は院付きというイメージだったが、ダブル院政などで対立軸が輻輳しているため、源氏内部、平家内部でもどちらにつくかわかれる。

結局、後白河天皇の側近・藤原信西の実利・実戦主義と源義朝の武力で後白河天皇・藤原忠通側が勝利するが、リアリスト藤原信西により摂関家そのものが弱体化、さらには死刑の復活と、いよいよ 武者(むさ)の世へ突入。

第八巻は鳥羽上皇の死から保元の乱の終結まで。濃密な一年が一冊に。第五巻が240年くらいを扱っていたことを考えると、メリハリがすごい。