El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

双調平家物語(6) 保元の巻(承前)

暴君・白河帝の長命の末に武者の世へ

一冊丸々「白河天皇(上皇)」。白河天皇は在位1072-1086、譲位して白河上皇となって院政は1086-1129、やりたい放題の57年間。乱脈という意味では、日本史上最大の暴君。藤原氏を、源氏を、平家をいいようにあしらいながら、自らは男色・女色、人妻であろうが、孫の嫁であろうが、荒淫。その荒淫のために奔走する藤原氏の各流、源氏の各流、平氏。

白河の青年期、壮年期、老齢期・・・それぞれの時代に対応する藤原氏、源氏、平氏は世代交代していく中で、77歳という長命であった白河の乱脈が多くの対立軸を生んでしまい、それはその後の鳥羽院政期(1129-1156)の末期に破裂して保元の乱・そして平治の乱となっていく。

摂関政治の終わりと武士の世の始まりをつなぐ100年間。いよいよ、二つの乱をへてタイトルである「平家物語」へと進んでいく。

また、中盤には前九年・後三年の役もきちんと織り込んで、関東の平氏と都に残った平氏の分離、勲功のわりに冷遇されていく源氏などもしっかり描かれて間然とするところなし。名著。