El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

双調平家物語(5) 父子の巻・保元の巻

驚異の橋本流日本史 奈良時代末期から院政の直前まで

本巻は、奈良時代末期から平安盛期・藤原時代(摂関政治)の終焉まで。

前半三分の一は、なぜ全盛時代と思われたその時に藤原仲麻呂(恵美押勝)が乱をおこし自ら滅びてしまったのか。教科書には1-2行でしか触れていないこの事件を詳細を極めて叙述。

中盤三分の一は、孝謙女帝と道鏡のスキャンダル政治とその終焉(天平〇〇時代の終わり)。そして、皇統が替わり、井上内親王と不破内親王に藤原四家がからみながら、平城京廃都、そして桓武天皇は平安京へ。

後半三分の一は、藤原北家の摂関政治全盛の240年(810~1050年くらい)をコンパクトに、しかしポイントは本当によくわかる。しかし、240年間姻戚関係で天皇家を籠の鳥のように培養しつづけた藤原北家はある意味怖い。

そしてその全盛期に、ちょっとしたボタンの掛け違えから摂関家フリーの後三条天皇の誕生に至る過程が鮮やかに描かれる。後三条天皇の子、白河天皇となって院政時代に突入というところで次巻へー。

日本史は院政以降は武士の時代の面白さで理解できているような気がするが、それ以前は事実の年号順羅列で出来事の因果関係、人物の内面などまったくわからなかった。このシリーズの橋本治流解釈は充分腑に落ちた。

まあ大学で国史をやれば常識のことばかりなのかもしれないが、基本的には皇室のスッタモンダがメインなので、おそらく高校の教科書では自主規制が入っているのだろうと思ったり。

無邪気な頃の自分の日本史理解への反省のために4年前に書いたものをここに・・