El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

新・私の本棚 (7)医師も明日は我が身「もしがんに、認知症になったら…」

https://membersmedia.m3.com/articles/8030#/ 今回はかなり難産。全12回の予定だが息切れ気味・・・少し連載間隔をあけてゆとりをもちたい。 闘病記が語る「情報過多の中で健康問題を決める危うさ」 65歳すぎの元外科医ホンタナが、医学知識のアップデート…

窯変 源氏物語(1)

「本書は紫式部の書いたという王朝の物語『源氏物語』に想を得て、新たに書き上げた、原作に極力忠実であろうとする一つの創作(フィクション)、一つの個人的な解釈である」(橋本治) ①桐壺・②帚木・③空蝉・④夕顔 窯変 源氏物語〈1〉 (中公文庫) 作者:橋本…

資本主義だけ残った

共産主義の新解釈に説得力あり 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来 作者:ブランコ・ミラノヴィッチ みすず書房 Amazon 一年以上の間、積読状態になっていた本。現実世界の変化が激しくて、ぼんやりしているとこの本に書かれた(きわめて刺激的…

名称未設定ファイル

品田遊を読んで、ネット・ネイティブではない自分を思う 名称未設定ファイル 作者:品田遊 コルク Amazon ネットにおける誹謗中傷・リコメンド機能・電子書籍端末・機械学習・仮想世界・Twitter世界・ソーシャルRPG・人工知能・・・・ 今どきのこうしたネタを…

大都会隠居術

時々、むしょうに読み返したくなる 大都会隠居術 (光文社文庫) 作者:荒俣 宏 光文社 Amazon 5年ほど前から本棚に常備していて時々パラりと読んでみるのだが、全部を読み通すことがなかったので読むことに。幸田露伴あたりから水木しげるとたくさんの名物(?…

窯変源氏物語 企画スタート

2023年の大長編は「窯変源氏物語」! 「源氏物語」ー原文でも谷崎純一郎訳でも挑戦しましたが「挫折」。「桐壺」「帚木」ときて「空蝉」あたりでギブすることが多い。おりしも、来年の大河ドラマは「光る君へ」、吉高由里子さんが紫式部を演じるということで…

カールの降誕祭

私たちは生涯、薄氷の上で踊っているのです カールの降誕祭 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon シーラッハの掌品三作にタダジュン氏の挿絵をたっぷりつけたちょっとお洒落な本。ただし中身は相変わらずのシニカル・ブラック。訳…

近江山河抄

私にはドライすぎる、白洲正子の語り口 近江山河抄 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ) 作者:白洲 正子 講談社 Amazon 近江の古寺のうち三井寺・石山寺に行ってみた。奈良・京都の寺社がインバウンド観光客であふれているのに比べたら静かだ。奈良や京都が…

杉本博司自伝 影老日記

絢爛たる成功者にも見えるが・・・ 杉本博司自伝 影老日記 作者:杉本 博司 新潮社 Amazon 写真をベースにした現代美術家ーそういうくくりでは捉えきれないほど多方面に活躍している杉本博司氏(現在75歳)の自伝、日経に30回にわたって連載した「私の履歴書…

湯布院奇行

いつか、どこかで読んだような 湯布院奇行 作者:燃え殻 Audible Amazon ウェブライター(?)としてだけでなく週刊誌にも連載エッセーを書いている「燃え殻」氏の短編をAudibleで聴いてみた。ナルシスティックで内向きな幻想小説といえばいいのだろうか。 泉…

古寺行こう(31)三井寺 石山寺 行ってみた

淡海の海 夕浪千鳥 汝が鳴けば 心もしぬに 古へおもほゆ 柿本人麻呂 隔週刊 古寺行こう (31) 三井寺・石山寺 2023年 5/23 号 小学館 Amazon 冬になって中止していた「古寺行こう」企画を再開、年間に「古寺行こう」10冊分は出かけてみたいのだが・・・ポスト…

吉原手引草

エンタメ小説かくあるべし 吉原手引草 作者:松井 今朝子 Audible Amazon 時代劇エンタメはAudibleにぴったりだとあらためて思う。この「吉原手引草」のように直木賞までとった作品は、エンタメであるというだけでなく時代考証がしっかりしているのでその勉強…

フォンターネ 山小屋の生活

山小屋暮らし。 フォンターネ 山小屋の生活 (新潮クレスト・ブックス) 作者:パオロ・コニェッティ 新潮社 Amazon 「帰れない山」のパオロ・コニエッティの山小屋エッセイ。このブログのタイトル「ファオンタナの本棚」に通じる「フォンターネ(村の名前)」…

もう一歩 写真が上手くなるコツ

「写真を撮る」ために撮るのではなく、「何かを伝える」ために撮る もう一歩写真が上手くなるコツ カメラは魔法の小箱です (玄光社MOOK) 作者:中井 精也 玄光社 Amazon NHKでおなじみの中井精也さん、なかなかの教え上手! 記録の写真や記念写真の延長ではな…

キッチンミノルの写真教室

男性趣味のABC キッチンミノルの写真教室 (単行本) 作者:キッチンミノル 筑摩書房 Amazon 高齢化してきて次第にスポーツもできなくなってくる男性にとって残るはインドア趣味のABC・・・A=Audio、B=Book、C=Cameraと勝手に想定している。Bookはこのブログ…

帰れない山

山の生活と下界の喧騒と・・・一方だけでは成立しない。 帰れない山 (新潮クレスト・ブックス) 作者:コニェッティ,パオロ 新潮社 Amazon イタリアとはいってもアルプスの南斜面あたりになるとガラリと雰囲気が変わる。トリノ、ミラノといった都会で仕事につ…

ブックガイド(112)ー 医療事故裁判のリアルー

https://uuw.tokyo/book-guide/ ー 医療事故裁判のリアルー 法医学者の使命 「人の死を生かす」ために (岩波新書 新赤版 1890) 作者:吉田 謙一 岩波書店 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコ…

オーディオ小僧のいい音おかわり

オーディオの正解は・・・ オーディオ小僧のいい音おかわり ~アナログからSACD、ハイレゾまで、帰ってきたオーディオ小僧~ (CDジャーナルムック) 作者:牧野良幸 音楽出版社 Amazon 現在、自宅デスクで聴くことができる音源は聴いている時間の長い順に「サブ…

コリーニ事件

読みやすいのに深い、それがシーラッハ節 コリーニ事件 (創元推理文庫) 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon シーラッハはフォン・シーラッハという名が示すようにドイツ貴族の家柄。しかし、祖父はナチスドイツの大物(ナチ党全国…

「心の病」の脳科学

12の先端研究が「こころの病気」もなんらかの物理的異常に由来することを可視化する 「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか (ブルーバックス) 作者:林(高木)朗子,加藤忠史 講談社 Amazon 国内の12の先端研究を研究者自らが解説する形式な…

キリンに雷が落ちてどうする 少し考える日々

スマホ小説ならぬスマホ日記 品田遊 キリンに雷が落ちてどうする 少し考える日々 作者:品田 遊 Audible Amazon するどい切り口なのは観察眼の故か・・・しかし、気づきすぎる心労はありそうな。膝を打つ(=すごく共感・納得する)意見が多いのだがやはりそ…

禁忌 TABU

境界を行きつ戻りつする感覚 そして「プロフェッショナル」とは!? 禁忌 (創元推理文庫) 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon このところ集中して読んでいるシーラッハの作品の中で初めての長編を読む。 正義と悪、生と死、真実と…

罪悪

「犯罪」に続く、シーラッハの「罪悪」 罪悪 (創元推理文庫) 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon ちょっとブラックな事件・事件未満をシーラッハのシニカルな表現で楽しむ。弁護士のところに事件としてあらわれてくる前の段階の、…

オーディオ誌あれこれ・・

過去記事でレコードプレーヤーのことを書いて半年・・・ 誕生月ということで(?)、初めての本格的アナログ・ターンテーブル(=レコード・プレーヤー)を導入してみた。オーディオテクニカAT-LP7(上の写真)。なかなかいい。レコードってこんなにいい音だ…

チ。ー地球の運動についてー

なかなか深い チ。―地球の運動について―(1) (ビッグコミックス) 作者:魚豊 小学館 Amazon 話題の科学哲学漫画「チ。」全8巻。積ん読状態になっていたのでゴールデンウイーク前半、なんとか4月中に読了。 15世紀の話。地動説をめぐって繰り広げられる人間…

ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語

「ダ・ヴィンチ・恐山」=「品田遊」若い才能にクラクラ ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語 作者:品田 遊 Audible Amazon Audibleで聴きましたが・・・文字で読まないと理解しきれない。 聴き始めてすぐにわかる作者の頭が切れる感じ。20代(5月1…

ロング・グッドバイ

「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」 ロング・グッドバイ 作者:レイモンド・チャンドラー,村上 春樹 Audible Amazon 80%は、Audibleで聴きました。最後の100ページは本を読みました。 創作物の内容はともかく、村上春樹の文体は耳障りが良いだろうと…

和解ある老いと死 家族にとっての看取りとは

赤ひげ医療は多死時代に通用するか? 和解ある老いと死―家族にとっての看取りとは 作者:黒岩 卓夫 教育史料出版会 Amazon 新潟の雪深い地区で老人が寿命を迎えて死んでいく、そこに医師としてかかわる著者による、死に向かう12のストーリー。文章が読みやす…

ブックガイド(111)ー 進化生物学者が考えるがん治療戦略ー

https://uuw.tokyo/book-guide/ ー 進化生物学者が考えるがん治療戦略ー がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ 作者:アシーナ・アクティピス みすず書房 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよ…

犯罪

Kindleにて再読。これは紙の本が欲しくなる 犯罪 (創元推理文庫) 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon 最新刊の「珈琲と煙草」に引っ張られて、読んだ記憶があった最初の作品集「犯罪」を探したところKindleの中にあったので再読。…