El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

窯変 源氏物語(1)

「本書は紫式部の書いたという王朝の物語『源氏物語』に想を得て、新たに書き上げた、原作に極力忠実であろうとする一つの創作(フィクション)、一つの個人的な解釈である」(橋本治)

①桐壺・②帚木・③空蝉・④夕顔

光源氏が語る源氏物語、男目線ではあるが、まさに現代小説になっていてわかりやすい。

①桐壺・・・藤原摂関家と帝の関係、その他の藤原家の立場など、まさに「双調平家物語」で何巻にもわたって解説されていたことが源氏物語のベースにある。そういう政治からのスタートがいかにも男目線。「光る君」源氏と「輝く日の宮」藤壺の間に「事件はあったのか、なかったのか」という謎も残しつつ。

②帚木・・・「帚木」とはー信濃国(長野県)園原にあって、遠くからはほうきを立てたように見えるが近寄ると見えなくなるという伝説上の樹木。転じて、情けがあるように見えて、実のないこと、姿は見えるのに会えないこと、また、見え隠れすることなどのたとえ。

17歳になった光源氏。いわゆる「雨世の品定め」。男たちの女性談義を通して、「狩りをする男」になっていく自分の運命を自覚する。冗長にも思える女性談義だが「男なんてこんなもんでしょ!」という紫式部の観察眼が光る。

③空蝉・・・17歳の源氏は方違えのために立ち寄った紀伊の守の屋敷で伊予の介(単身赴任中・紀伊の守の父?)の後妻を無理やり・・・、そしてその弟・小君には少年愛を遂げる。

さらに後日、その後妻(空蝉の女)への恋慕から、小君を案内役にその館に忍んで行くが彼女は衣だけ残して姿を隠し、源氏は駄賃替わり(?)にそこにいた伊予の介の娘(後妻にとっては継娘)軒端の萩(荻?)を無理やり・・・。紀伊の守とその父・伊予の介にとって、源氏は性に飢えた狼!?このままですませられるのか!?

④夕顔・・・源氏物語54帖はメインストーリー系とエピソード系に分かれるという説があって、帚木・空蝉・夕顔はエピソード系で後から挿入されたんじゃないかという話もある。夕顔のエピソードは、誘い出した相手とホテルにいたら相手が死んじゃったという、まあ現代的な・・・。これを読むと、押尾学と森元首相の息子の関わった(と言われている)事件を思い出す。源氏=森元首相の息子、惟光(これみつ)=押尾。惟光に後処理を押し付けるという。まあ、色男の失敗談も入れておくということか。

さて第1巻は終わり、次の若紫はメインストーリー系。