12の先端研究が「こころの病気」もなんらかの物理的異常に由来することを可視化する
国内の12の先端研究を研究者自らが解説する形式なので「かなり高度」。医師や医学生、あるいは生物学の研究者向けの本と考えたほうがいいくらいのレベル。しかし、かなりバラバラな研究の寄せ集めでもある。入口としてはいい。この先、診療をやりながらこの本に書かれていることが実用化されていくのを実感するときが来ると面白い。
第1部は病因論の総論3題
第1章 シナプスから見た精神疾患(研究者リンク)
第2章 ゲノムから見た精神疾患(研究者リンク)
第3章 脳回路と認知の仕組みから見た精神疾患(研究者リンク)
シナプスにおける「グルタミン酸」と「ガンマアミノ酪酸(GABA)」の関係、シナプス可塑性など基本を学ぶ。ゲノム領域の研究手法ーNGS時代の研究。もう一度回路にもどって。
第2部は実際の疾患とその原因を探る研究3題
第4章 慢性ストレスによる脳内炎症がうつ病を引き起こす?(研究者リンク)
第5章 新たに見つかった「動く遺伝因子」と精神疾患の関係(研究者リンク)
第6章 自閉スペクトラム症の脳内で何が起きているのか(研究者リンク)
第7章 脳研究から見えてきたADHDの病態(研究者リンク)
うつ病の化学説。動く遺伝子「レトロ・トランスポゾン」→LINE-1、これは面白い。なんとヒトDNAの半分近くが動いたあとの遺伝子の残骸。ADSモデルマウス。ADHD、他人ごとではない。
第3部は治療とからめた研究5題
第8章 PTSDのトラウマ記憶を薬で消すことはできるか(研究者リンク)
第9章 脳科学に基づく双極性障害の治療を目指す(研究者リンク)
第10章 ニューロフィードバックは精神疾患の治療に応用できるか(研究者リンク)
第11章 ロボットで自閉スペクトラム症の人たちを支援する(研究者リンク)
第12章 「神経変性疾患が治る時代」から「精神疾患が治る時代」へ (研究者リンク)
メマンチンによる海馬記憶のコントロール。神経変性疾患が2010年頃から治る病気になり始めている!