El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

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シリーズ中国の歴史 ③ 草原の制覇:大モンゴルまで

部族の興亡が激しすぎて著者の主張が見えない 草原の制覇: 大モンゴルまで (岩波新書) 作者:崇志, 古松 発売日: 2020/03/21 メディア: 新書 草原には匈奴→鮮卑→突厥→ウイグル→契丹→西夏→女真→モンゴル→女真(満州)とさまざまな部族が、あるいは同時にあるい…

意識と感覚のない世界

医師もライティングを学んで書く時代 意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか 作者:ヘンリー・ジェイ・プリスビロー 発売日: 2019/12/18 メディア: 単行本 アメリカのベテラン麻酔科医の麻酔に関するエッセー集。日本語のタイトル「…

持続可能な魂の利用

「おじさん」も読んで学びたい 持続可能な魂の利用 作者:松田青子 発売日: 2020/05/20 メディア: Kindle版 この国から「おじさん」が消える・・・という帯にどっきり。おじさん、いやじいさん(?)が読んでみた。 女性の目からみて自分も含めて「おじさん」…

シリーズ中国の歴史 ② 江南の発展: 南宋まで

「中国人らしさとは何か」にまで踏み込んだ歴史書!蒙を開く一冊。 江南の発展: 南宋まで (岩波新書) 作者:充拓, 丸橋 発売日: 2020/01/23 メディア: 新書 広大な国土のため統一王朝になればなるほど緩やかにしか統治できないし、武断では統治できない。最初…

嘘と孤独とテクノロジー 知の巨人に聞く

ボストンの知識人村で暮らすということ 嘘と孤独とテクノロジー 知の巨人に聞く (インターナショナル新書) 作者:吉成 真由美 発売日: 2020/04/07 メディア: 新書 インタビュアー・吉成真由美・・ノーベル賞受賞の利根川進氏の妻。65歳。ハーバードやMIT系の…

世界哲学史 (3)

神がもたらした超越と普遍 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて (ちくま新書) 作者:伊藤邦武,山内志朗,中島隆博,納富信留 発売日: 2020/03/20 メディア: Kindle版 哲学のシロウトが第3巻まで読んで思うのは、「歴史の裏側に哲学あり」ということ。歴史…

小田嶋隆 ザ、コラム

好きだけど、やがてさみしきコラム道。 ザ、コラム 作者:小田嶋隆 発売日: 2016/10/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) その成り立ちからして結局は使い古されていくのかコラム。アル中みたいな永続的テーマのコラムはいつまでたってもリアリティがあるが…

もうダメかも――死ぬ確率の統計学

日本では通用しない話が多すぎる もうダメかも――死ぬ確率の統計学 作者:マイケル・ブラストランド,デイヴィッド・シュピーゲルハルター 発売日: 2020/05/15 メディア: Kindle版 人間の一生をとりまくリスクを「統計という数字」と「リアルな出来事」という2…

世界哲学史 (1)

我もまたミリンダ! 一周回って、諸行無常? 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ (ちくま新書) 作者:伊藤邦武,山内志朗,中島隆博,納富信留 発売日: 2020/01/17 メディア: Kindle版 いい歳になってきたのでじっくり学んでみようかとこのシリーズに挑戦。 …

大阪弁ブンガク論

自意識過剰の大阪弁 K氏の大阪弁ブンガク論 作者:江弘毅 発売日: 2018/06/22 メディア: 単行本(ソフトカバー) ことさらに大阪弁、大阪弁て言わんでも、取り上げた小説は素直に読めば素直におもしろい。大阪弁に自意識過剰になって、なんだか不自然で、自分…

時間とテクノロジー

「まとめサイト」のような本。 時間とテクノロジー 作者:佐々木俊尚 発売日: 2019/12/17 メディア: 単行本(ソフトカバー) 巻末にたくさんの参考文献・資料が挙げられているが、それらの「おまとめ」をつないだ本。What's New? と言ってるうちに終わってし…

リスクの正体

一編が4ページでは何が言いたいのか伝わらない リスクの正体――不安の時代を生き抜くために (岩波新書) 作者:神里 達博 発売日: 2020/06/20 メディア: 単行本 はしがきが8ページあり、ここを読んだときには期待があった。COVID-19や地震をからめて重厚なリス…

世界史の針が巻き戻るとき

「世界は存在しない」というのは日本では自明の理・・・と明記あり 世界史の針が巻き戻るとき 「新しい実在論」は世界をどう見ているか (PHP新書) 作者:マルクス・ガブリエル 発売日: 2020/02/15 メディア: Kindle版 「なぜ世界は存在しないのか」のエッセン…

なぜなぜ世界は存在しないのか

日本人には・・当たり前なのでピンとこない? なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ) 作者:マルクス・ガブリエル 発売日: 2018/01/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) 一神教世界に育ち、カントやヘーゲル、ポストモダンと学んだであろう著者が到達…

それでも読書はやめられない

この本の影には、それなりの努力が見える それでも読書はやめられない: 本読みの極意は「守・破・離」にあり (NHK出版新書) 作者:浩爾, 勢古 発売日: 2020/03/10 メディア: 単行本 特定のジャンルの本を読んでは、バッサバッサと切り捨てる(一部賞賛もあり…

シリーズ中国の歴史 ① 中華の成立 唐代まで

行政改革メインでたどる中原の中国史 中華の成立: 唐代まで (岩波新書) 作者:信一郎, 渡辺 発売日: 2019/11/21 メディア: 新書 4千年前の黄河中流域農耕社会の成立から8世紀半ば唐帝国の崩壊の始まり(=安史の乱)まで3千年のいわゆる中原の歴史。ただし、…

牧水の恋

宮崎県人のテゲテゲ感 牧水の恋 作者:万智, 俵 発売日: 2018/08/29 メディア: 単行本 牧水は郷土の歌人であり高校の先輩。酒で43歳で死ぬのだが、なぜそこまで飲んべだったのか?県民性と言われるとつらい。その原因に「かなわぬ恋」を据えてみたのが俵万智…

これからはソファーに寝ころんで

「まえがきにかえて」がすごくいい! これからはソファーに寝ころんで 作者:岡崎武志 発売日: 2019/05/30 メディア: 単行本 「これからはソファーに寝ころんで」というタイトルとカバー絵から62歳のたゆたう読書と音楽の生活が私小説風につづられるのかと思…

生命はデジタルでできている

分子生物学をデジタルの眼でみれば 生命はデジタルでできている 情報から見た新しい生命像 (ブルーバックス) 作者:田口善弘 発売日: 2020/05/20 メディア: Kindle版 遺伝情報の保存庫DNAから特定のRNAが読みだされる。RNAの核酸3文字からなるコードをアミノ…

患者になった名医たちの選択

玉石混交・・・ 患者になった名医たちの選択 (朝日新書) 作者:塚崎 朝子 発売日: 2020/03/13 メディア: Kindle版 2020年5月29日 興味深いのはLGBTの松永先生とアルコール依存症の河本先生。こういう主観の部分が大きい状態は、その病気(?)を自分事として…

日本社会のしくみ

日本の雇用慣行形成史としてわかりやすい。 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書) 作者:小熊 英二 発売日: 2019/07/17 メディア: 新書 2020年5月27日 日本の働き方、外国(アメリカ・ドイツ)の働き方の違いから説きはじめ明治維…

陸奥宗光-「日本外交の祖」の生涯

ショック・ドクトリンの人、陸奥宗光 陸奥宗光-「日本外交の祖」の生涯 (中公新書) 作者:佐々木 雄一 発売日: 2018/10/19 メディア: 新書 小説とはちがい脚色なく事実を書いているため波乱万丈の面白さはないけれど、外交ヒーローとしてではなく職業としての…

ジャズ批評 2020年 03 月号

サブスク・リスナーの友。 Stay Homeを快適に! ジャズ批評 2020年 03 月号 [雑誌] 発売日: 2020/02/25 メディア: 雑誌 ここ数年3月号は買うようにしている。とにかくたくさんのタイトルが挙げられているので順にAmazon Music HDで検索しては聴いてみる。か…

おしゃべりな糖

まさに、甘いだけが糖(鎖)じゃない! おしゃべりな糖 (岩波科学ライブラリー) 作者:笠井 献一 発売日: 2019/12/07 メディア: 単行本 「糖鎖(とうさ)」。グルコースのような糖がくさり状につながったもののこと。この糖鎖、例えば血液型は赤血球の膜に存…

夏の災厄

Stay Homeにウイルス・パニック小説を 夏の災厄 (角川文庫) 作者:篠田 節子 発売日: 2015/02/25 メディア: 文庫 場所の設定は西多摩のあたり、夜間救急診療所や保健所が最初の舞台になります。医療者と保健所のお役所仕事のせめぎあいなど冒頭からCOVID-19の…

アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり

「薬剤師っていらなくない?」で始まる薬剤師マンガ アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり コミック 1-4巻セット 作者:荒井ママレ,富野浩充 発売日: 2020/04/20 メディア: コミック 2020年4月から石原さとみさん主演でドラマ化されます(の予定がCOVID-…

スマホ依存から脳を守る

「子どものスマホ依存」から脳を守る スマホ依存から脳を守る (朝日新書) 作者:中山 秀紀 発売日: 2020/02/13 メディア: Kindle版 スマホ依存は子供よりも大人のほうが問題じゃないのかなあ。あれだけ時間費やしてSNSやってたら人間としての成長や生産性はだ…

ボクはやっと認知症のことがわかった

結局、認知症は老化の一形態であり疾病化するべきではなかった、ということなんじゃないのかな ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言 作者:長谷川 和夫,猪熊 律子 発売日: 2019/12/27 メディア: 単行本 …

新型インフルエンザ―世界がふるえる日

山本太郎先生(れいわ新撰組とは無関係)の感染症三部作は読んでおくべき 新型インフルエンザ 世界がふるえる日 (岩波新書) 作者:山本 太郎 発売日: 2015/01/22 メディア: Kindle版 2006年発刊の本でインフルエンザがメインのように見えるが感染症すべてに共…

アメリカ合衆国史③ 20世紀アメリカの夢

あくまでもアメリカ内政史 20世紀アメリカの夢: 世紀転換期から1970年代 (岩波新書) 作者:耕太郎, 中野 発売日: 2019/10/19 メディア: 新書 遅れてきた移民や黒人、女性が社会の構成員として認められ内部的に成熟していく過程がよくわかる。内政に詳しい一方…