「中国人らしさとは何か」にまで踏み込んだ歴史書!蒙を開く一冊。
広大な国土のため統一王朝になればなるほど緩やかにしか統治できないし、武断では統治できない。最初は武力によって王朝ができても、結局は文官機構による統治へとならざるを得ず、武力がしだいに軟弱化して、次の王朝になる。そうやって王朝と武力勢力は入れ替わっても文官機構は永続していく。王朝を目指すよりは文官機構での立身を目指せばよい。これが推し進められれば科挙で進士になるということになる。そうはなれずにドロップアウトした者たちが武力勢力となって王朝を倒しても、また同じことの繰り返し。重心を中原から江南へ移動させながらこの王朝交代が繰り返される。
緩やかな統治は、規制は少ないが保護もない。ころころ代わる王朝なんて頼りにならない。自分の身を守るには成り上がる(最高は進士・士大夫になる)か、有力な友達とつるんで(幇)コネを大事にする。・なるほど、西洋近代的な諸制度とはなじみにくいわけだ。現代中国人も共産党や議会制民主主義なんてあてにしないんだろうな、きっと。
そういった中国人らしさの解明が書かれている中国史に初めて出会った。蒙を開かれた思い。蒙を開かれた・・と言えば、次巻は蒙古帝国だ!