El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

嘘と孤独とテクノロジー 知の巨人に聞く

ボストンの知識人村で暮らすということ

インタビュアー・吉成真由美・・ノーベル賞受賞の利根川進氏の妻。65歳。ハーバードやMIT系の人脈と英語力を生かした欧米知識人関連の著作は彼女ならでは。本書も、5人の人となりが伝わる仕上がりになっている。前書きも良い。ただし、各巨人の年齢が50歳~92歳と幅が広くその影響は当然発言にも表れているので年齢は書いて欲しかった(politically incorrect?)。知の巨人たちは皆ご近所さん。

エドワード・O・ウィルソン・・進化生物学。いかにもフィールド・ワーカーという朴訥とした感じ。ネット時代論には乗ってこない。1929年生・90歳だもの。

ティモシー・スナイダー・・中東欧史。「ブラッド・ランド」の著者、当然ながらロシア批判が長め。ロシアがFacebookレベルでアメリカ人を分断していた話は興味深い。ネット批判的。1969年生・50歳と若い。「忖度による服従をするな」は日本人には耳が痛い。

ダニエル・C・デネット・・哲学、科学的世界観。ネットなんて小さい話といった感じで大人(たいじん)である。1942年生・78歳。

スティーブン・ピンカー・・認知心理学。「21世紀の啓蒙」の著者、その楽観主義は胡散臭いと以前から私は思う。ネット社会に対応していこう派。1954年生・65歳。

ノーム・チョムスキー・・言語哲学。歯に衣着せず多くの権威をこきおろす。1928年生・91歳。かなり頑固爺さんっぽい語り口だが年齢のせいもあるか。