El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

シリーズ中国の歴史 ① 中華の成立 唐代まで

行政改革メインでたどる中原の中国史

中華の成立: 唐代まで (岩波新書)

中華の成立: 唐代まで (岩波新書)

 

4千年前の黄河中流域農耕社会の成立から8世紀半ば唐帝国の崩壊の始まり(=安史の乱)まで3千年のいわゆる中原の歴史。ただし、これまでの中国史(=王朝断代史)ではなく、農耕や戦争技術の向上と人口増加・辺縁との交渉という変化要素を織り込みながら、行政と生活がどう変化していったのか・・それがメインに書かれている。

行政の変化がメインであるから王や英雄ではなく行政改革とそれを実行した人物が主人公。故に商鞅や王莽が秦の始皇帝漢の武帝よりも前面に出てくる。そしてその行革で生活がどう変わったか、例えば一家でどれくらいの畑を耕してどの程度の生活をしていたのかという視点になる。

考えてみれば、集団としての生活を円滑に行うための行政があって、その行政が歴史のさまざまな要素の変化にフィットすべく改革されて、また陳腐化して、また改革される・・それこそが真の意味の歴史だと気づく。

4千年間、ほぼ同じような人々が同じような領域で紡いできた歴史ゆえにたどれる行政改革史。やはり中国は大きく悠久なのだなあ。