El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

新型インフルエンザ―世界がふるえる日

 山本太郎先生(れいわ新撰組とは無関係)の感染症三部作は読んでおくべき 

2006年発刊の本でインフルエンザがメインのように見えるが感染症すべてに共通する疫学用語がよくわかり新型コロナウイルスのニュースなどを読み解くのにかなり役に立つ。専門家会議の報告に出てくる「基本再生産数」「サイトカイン・ストーム」などなど。パンデミックにも情緒的ではない意味があり「危機段階フェーズ6」だと知る。

スペイン風邪のときは比較的軽症で中高年主体の第一波と重症で若壮年主体の第二波があった。感染拡大の中、ウイルスも変容する。同じことが起きない保証はない。スペイン風邪拡大には「戦争と鉄道」が大きな役割をはたしたが新型コロナウイルスではさしずめ「グローバル経済と飛行機とクルーズ船」がそれに当たるのだろう。

山本先生は2005-6年の新型インフルエンザの対策で活躍されたようだが、その時リーダー的存在だったWHO事務局長・李鍾郁氏が硬膜下出血で2006年に急死し、その次の事務局長選挙では中国押しの陳馮富珍(マーガレット・チャン)が選ばれ、現在専門家会議副座長でテレビでおなじみの尾身先生は惜しくも敗れた。陳馮富珍のあとが現在のテドロス氏ということを考えると・・・政治もまた感染症と無縁ではない。

なお、山本太郎先生の岩波新書感染症三部作は本書、「感染症と文明」(2011)、「抗生物質と人間」(2017)です。