El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

窯変源氏物語 (3)

⑧花宴・⑨葵・⑩賢木 窯変 源氏物語〈3〉 花宴 葵 賢木 (中公文庫) 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon ⑧花宴(はなのえん)・・ここまで来て源氏物語の構造がかなりわかってくる。天皇と左大臣系藤原氏と右大臣系藤原氏の3血統の間での勢力争いが基本にある。…

苔のむすまで

それを私も言いたかった 苔のむすまで 作者:杉本 博司 新潮社 Amazon 「それを私も言いたかった」という文章が多く、微妙な反発心もありながら、結局あらがえずに読んでしまう、杉本博司氏の文章。 まるで、自分の分身であるかのようなーゆえに、反発も感じ…

窯変 源氏物語(2)

⑤若紫・⑥末摘花・⑦紅葉賀 窯変 源氏物語〈2〉 若紫 末摘花 紅葉賀 (中公文庫) 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon ⑤若紫・・光源氏18歳。祈祷を受けに出かけた寺で偶然見かけた少女9歳(後の紫の上)に一目ぼれ、当然周りからは警戒される。それでもじわじわ…

小さきものの近代1

渡辺京二氏の絶筆 小さきものの近代 〔第1巻〕 作者:渡辺京二 弦書房 Amazon 昨年12月に訃報が伝えられた渡辺京二氏。死去の5か月前に出版されたのが本書。幕末・維新から大逆事件あたりまでの、教科書には出てこないような市井の人物の評伝をたどることで、…

認知症のブレインサイエンスとケア

無責任なトンデモ医療本 認知症のブレインサイエンスとケア ―アルツハイマー認知症は抗ウイルス薬で予防できる― 作者:松下哲 かまくら春秋社 Amazon 副題の「アルツハイマー認知症は抗ウイルス薬で予防できるー」に惹かれて読んでみたが、エビデンスのはっき…

ブックガイド(113)ー 効いてない!がん治療ー

https://uuw.tokyo/book-guide/ ー 効いてない!?がん治療ー 悪いがん治療 作者:ヴィナイヤク・プラサード 晶文社 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトのブックガイドです。第113回…

プロジェクト・ヘイル・メアリー(上)

アメリカSFから中国「三体」へのカウンター プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンディ・ウィアー,小野田 和子 Audible Amazon Audibleで聴きました。 アストロファージに異星人、サイエンス好きにはたまらない。 エネルギーを質量に、質量をエネル…

新・私の本棚 (7)医師も明日は我が身「もしがんに、認知症になったら…」

https://membersmedia.m3.com/articles/8030#/ 今回はかなり難産。全12回の予定だが息切れ気味・・・少し連載間隔をあけてゆとりをもちたい。 闘病記が語る「情報過多の中で健康問題を決める危うさ」 65歳すぎの元外科医ホンタナが、医学知識のアップデート…

窯変 源氏物語(1)

「本書は紫式部の書いたという王朝の物語『源氏物語』に想を得て、新たに書き上げた、原作に極力忠実であろうとする一つの創作(フィクション)、一つの個人的な解釈である」(橋本治) ①桐壺・②帚木・③空蝉・④夕顔 窯変 源氏物語〈1〉 (中公文庫) 作者:橋本…

資本主義だけ残った

共産主義の新解釈に説得力あり 資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来 作者:ブランコ・ミラノヴィッチ みすず書房 Amazon 一年以上の間、積読状態になっていた本。現実世界の変化が激しくて、ぼんやりしているとこの本に書かれた(きわめて刺激的…

名称未設定ファイル

品田遊を読んで、ネット・ネイティブではない自分を思う 名称未設定ファイル 作者:品田遊 コルク Amazon ネットにおける誹謗中傷・リコメンド機能・電子書籍端末・機械学習・仮想世界・Twitter世界・ソーシャルRPG・人工知能・・・・ 今どきのこうしたネタを…

大都会隠居術

時々、むしょうに読み返したくなる 大都会隠居術 (光文社文庫) 作者:荒俣 宏 光文社 Amazon 5年ほど前から本棚に常備していて時々パラりと読んでみるのだが、全部を読み通すことがなかったので読むことに。幸田露伴あたりから水木しげるとたくさんの名物(?…

窯変源氏物語 企画スタート

2023年の大長編は「窯変源氏物語」! 「源氏物語」ー原文でも谷崎純一郎訳でも挑戦しましたが「挫折」。「桐壺」「帚木」ときて「空蝉」あたりでギブすることが多い。おりしも、来年の大河ドラマは「光る君へ」、吉高由里子さんが紫式部を演じるということで…

カールの降誕祭

私たちは生涯、薄氷の上で踊っているのです カールの降誕祭 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 Amazon シーラッハの掌品三作にタダジュン氏の挿絵をたっぷりつけたちょっとお洒落な本。ただし中身は相変わらずのシニカル・ブラック。訳…

近江山河抄

私にはドライすぎる、白洲正子の語り口 近江山河抄 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ) 作者:白洲 正子 講談社 Amazon 近江の古寺のうち三井寺・石山寺に行ってみた。奈良・京都の寺社がインバウンド観光客であふれているのに比べたら静かだ。奈良や京都が…