El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

窯変 源氏物語(2)

⑤若紫・⑥末摘花・⑦紅葉賀

⑤若紫・・光源氏18歳。祈祷を受けに出かけた寺で偶然見かけた少女9歳(後の紫の上)に一目ぼれ、当然周りからは警戒される。それでもじわじわと攻め立ててついには誘拐もどきの方法で親代わり(?)として自分のもとに連れてきてしまう。新潟で誘拐した少女を長年育てて・・という映画「飼育」みたいな事件があったが、まあ似たようなもの。光源氏と惟光(これみつ)のコンビはまさにぼんぼんの若大将と手先の悪仲間という感じで、その軽さが結構おもしろい。

という間にも、帝の女御である藤壺の宮を襲って妊娠させているわけで、まあチンピラ貴族だと思って読むのも一興。

⑥末摘花・・請われて「ひょっとしたらイイ女かも」と出かけてみたらとんでもない醜女だったというエピソード。むしろ仲立ちをして暗躍する大輔命婦(たゆうのみょうぶ)こそが主役なのかも。

⑦紅葉賀・・藤壺の女御が光源氏との間にできた男児を出産。もちろん帝である桐壺帝の子として。藤壺の女御は中宮に、光源氏は宰相に。それにしても仕事は何をしているのか?この宮廷貴族たちは?と考えていたら次の文章が「何もすることのない、ただ歌い遊ぶだけの国事行為が続くこの世の中で。ただそのことに奔走する、男たちで犇めきあうこの世の中でー。」なかなか過激な世相批判だがそんなこと紫式部の時代に本当に書いたのか?原文にあたるとやはりここは橋本治の創作のようだ。

参考図書 窯変源氏物語だけでは橋本治の独自解釈なのか、もともと書かれているのかわからない場合があるので、大野晋・丸谷才一の源氏物語解釈対談「光る源氏の物語」を同時並行で読んでいます。併せて、原文は岩波文庫の「源氏物語」を参照中。