El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

窯変源氏物語 (3)

⑧花宴・⑨葵・⑩賢木

⑧花宴(はなのえん)・・ここまで来て源氏物語の構造がかなりわかってくる。天皇と左大臣系藤原氏と右大臣系藤原氏の3血統の間での勢力争いが基本にある。その争いは婚姻関係を軸に天皇家の血統とどう関わるかで変わっていく。光源氏は天皇(桐壺帝)の子供ではあるけれど臣籍に下ったということで自由さと血統とを巧みにあやつってまあ好き放題やってる。正室は左大臣の娘だが、ここでは右大臣家の娘(六の君=朧月夜)と関係。桐壺帝は朱雀帝へ譲位し藤壺の中宮が生んだ源氏の子が春宮(皇太子)へ。

⑨葵(あおい)・・かなりドラマチック!賀茂神社の祭りが今で言う「葵まつり」で葵祭周辺での光源氏の正室(=葵上)と元カノである六条の御息所(みやすどころ)のライバル心あらわな意地の張り合いの中で、葵上が源氏の子を妊娠し、男児を出産(後の夕霧)。出産前後での葵上の病臥と六条御息所の生霊。混乱の中で出産、源氏と葵上のこころが初めて通じた・・・と思ったその夜に葵上の死。

そしてエロティック!無常を感じつつ久しぶりに自宅にもどった源氏は13歳になった紫の上と3日連続で関係。その描写が周辺描写だけなのになんともまあエロティック。時に源氏は22歳。

⑩賢木(さかき)・・「私は何をしても許される身なのだから・・・」最初はあきれていた光源氏の好色ぶりだが、それが平安の世の習いだとわかってくると「恋愛力」をバネにして権力闘争を闘っていこうという源氏の姿勢には好感も持てる。

六条御息所は娘とともに伊勢へ。桐壺院の死による左大臣派から右大臣派への権力移行。しつこい源氏から逃れるように出家する藤壺の中宮。右大臣の娘・朧月夜との恋愛関係を利用して状況突破をはかる源氏。高貴な生まれでも「人生は闘争だ」。