El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

新・私の本棚 (5)理系研究者の人生終盤は? 医師が読み解く「老後のヒント」

https://membersmedia.m3.com/articles/7061 65歳すぎの元外科医ホンタナが、医学知識のアップデートに役立つ一般向け書籍をセレクトし、テーマごとに同世代の医師に紹介するブックレビューのサード・シーズン「新私の本棚・65歳超えて一般書で最新医学」の…

クライマーズ・ハイ (Audible)

悲しい思い出 クライマーズ・ハイ 作者:横山 秀夫 Audible Amazon 1985年、医者にはなったけれど大学院生でもあった私は4月から初めての東京暮らしをしていた。生活費は病院の当直バイトで稼がなくてはならない身分だったのでお盆の時期は稼ぎ時で、8月12日…

双調平家物語(14) 治承の巻(承前)・源氏の巻

清盛の被害妄想が平家没落を加速する1180年(治承4年) 双調平家物語〈14〉治承の巻2(承前) 源氏の巻 (中公文庫) 作者:橋本 治 中央公論新社 Amazon 以仁王・源頼政の打倒平家の旗揚げ(治承4年 1180年5月)。しかし、三井寺と叡山と興福寺それぞれの宗教勢…

訃報 目黒孝二氏 (「本の雑誌」創刊者)

団塊世代男性が死んでいく時代に入ってきたのですね 本の雑誌2023年1月号475号 本の雑誌社 Amazon 「本の雑誌」の創刊者で書評家・北上次郎としても知られる目黒孝二さんが死去された。享年76歳ということは昭和21年か22年のお生まれ、いわゆる団塊世代。団…

現代カタストロフ論

50年たつと過去の過ちを忘れてしまうだけ 現代カタストロフ論: 経済と生命の周期を解き明かす (岩波新書 新赤版 1953) 作者:金子 勝,児玉 龍彦 岩波書店 Amazon カタストロフ理論は1970年代~80年代に小さなブームがあったが、結局のところこの本がそうであ…

ヴァロットン 黒と白

8年ぶり2度目のヴァロットン展に行く前に ヴァロットン ――黒と白 (単行本) 作者:三菱一号館美術館 筑摩書房 Amazon 展覧会の図録も普通の出版社が出す時代になったのか、丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「ヴァロットン 黒と白」展の図録が筑摩書房から…

忘れる脳力

記憶と忘却のメカニズムーけっこうためになる! 忘れる脳力 脳寿命を伸ばすにはどんどん忘れなさい (朝日新書) 作者:岩立 康男 朝日新聞出版 Amazon 怪しい脳科学本と思ってしまいそうなタイトルだが、千葉大の脳外科の教授で脳の基礎研究の実績も十分な岩立…

ブックガイド(108)ージェネリックとインドー

ージェネリックとインドー https://uuw.tokyo/book-guide/ ジェネリック医薬品の不都合な真実 世界的ムーブメントが引き起こした功罪 作者:Katherine Eban 翔泳社 Amazon 新年明けましておめでとうございます。今年もブックガイドをよろしくお願いします。気…

訃報 今野 浩氏(工学部ヒラノ教授) 2022年2月に逝去

工学部ヒラノ教授シリーズで理系の老後の指針を示してくれる一人だった今野浩氏が昨年2月に亡くなっていた。亡くなった後にもシリーズの新刊が出ていたこともあり、不覚にも死去を把握していなかった。彼の著書を原稿に引用していたところ編集者から教えられ…

菊帝悲歌 小説後鳥羽院

隠岐に流されてからの人生が味わい深い 菊帝悲歌: 小説後鳥羽院 (河出文庫) 作者:塚本 邦雄 河出書房新社 Amazon 後鳥羽上皇と言えば、まさに「鎌倉殿の13人」のラストで承久の変を起こし北条時宗・泰時に敗れ、かろうじて残っていた天皇家という権威に終止…

2022年のAudibleまとめ

こういうレポートがAmazonから届いた。 私がAudibleを聴いていた時間は、年間15,490分=258時間1日あたり43分。これで月1500円がリーズナブルなのかどうかわからない。しかし、今はウォーキング時に必須なものになっているので、まんまとAmazonの戦略に乗っ…

ルポ 副反応疑い死ーワクチン政策と薬害を問い直す

コロナワクチンの副反応死は「17万分の1」 ルポ 副反応疑い死 ――ワクチン政策と薬害を問いなおす (ちくま新書 1701) 作者:山岡 淳一郎 筑摩書房 Amazon 新型コロナウイルスワクチンによる副反応は接種部位の痛み・発熱など多彩だが。いったいどれくらい…

すずめの戸締り

アニメでしか描けない、「3・11鎮魂歌(レクイエム)」 【冒頭12分映像】『すずめの戸締まり』※本編ではございません。 原菜乃華 Amazon Amazon Primeで公開されている冒頭12分に引き続いて神戸三宮のシネコンで鑑賞してきた。宮崎ー愛媛ー神戸ー東京ー仙台…

破局 Audible

「内面のない男」の話 破局 作者:遠野 遥 Audible Amazon Audibleで聴きました。平成生まれの作家による初の芥川賞受賞という作品(2020)。 主人公・陽介は慶応の4年生でラグビー部で鍛え上げた肉体をもち、勉強もそこそこでき、同級生の彼女・麻衣子がいて…

ぼけと利他

「ぼけ」が、利他に必要な「ずれ」を産み出す ぼけと利他 作者:伊藤亜紗,村瀨孝生 ミシマ社 Amazon 伊藤亜紗さんが目下研究テーマとしている「利他主義」、単に他人(ひと)のために何かをしてあげるということではなく、何かをしてあげることが行為者である…

本心

2040年の日本のリアルが感じられる 本心 作者:平野啓一郎 コルク Amazon 2022年に読み続けてきた平野啓一郎、彼の目下のところの最新長編「本心」(2021年5月刊行)を元旦から一気読み。平野啓一郎は2022は三島由紀夫の長大な評論にかかりきりだったようなの…