El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ルポ 副反応疑い死ーワクチン政策と薬害を問い直す

コロナワクチンの副反応死は「17万分の1」

新型コロナウイルスワクチンによる副反応は接種部位の痛み・発熱など多彩だが。いったいどれくらい発生し死亡例があるのかなど、コロナの感染状況の不透明さとはまた比べものにならないレベルではっきりしていない。

もちろん現在進行形の事態であるから行政が追いつかない部分はあるとしてもすでに3年に及び、日本国内だけでも累計3億回以上の接種が行われており、それなりの数の重篤な、あるいは死に至る副反応は出ている。そうした現状の理解のためにこの本を読んでみた。

副反応は医療機関から「副反応疑い報告制度」によってPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に伝えられ管轄する厚生労働省にあげられる。

有害事象とワクチン接種の因果関係について
否定できない(=認める)=α  認められない=β  評価不能=γ の3パターンに判定されるているが、これはワクチン接種のリスク・ベネフィットを出すためのもので、99%がγ判定となっている。実際の被害者救済に使われるためのものではなく、接種を勧奨する材料として使われている数字。重篤な副反応は、アナフィラキシー・血小板減少を伴う血栓症(TTS)・心筋炎ー心膜炎

2022年9月4日時点の数字は以下のようになっている。
副反応・・・34828件
  そのうち重篤例(死亡・障害・入院など)・・・7798件
  そのうち死亡・・・1854件
接種総数は3億1450万件(死亡/接種総数=0.0006%、17万件に1件の死亡発生で、これはインフルエンザワクチンの副反応での死亡発生の10倍程度)

救済制度はこれとは別にあり、予防接種健康被害救済制度というコロナに限らない予防接種全体の制度の中で扱われている。本人(死亡時は家族)が市町村窓口に補償を申請しなくてはならない。

2022年11月7日までに国が受け付けた救済申請
総件数            5013件
  そのうち死亡による一時金請求        418件
     そのうち審査された件数        19件
     認可 (=支払い)     10件
     残りは保留もしくは否認(多くは審査にたどりつけていいない)

副反応は起きるというのは前提。全体の利益のために接種をおこない、稀に起こる副反応被害は個別に国が補償するというしくみ。しかし、救済制度はまったく現状に追いついていない、というかワクチンをあれだけ勧奨している中で重篤な副反応の話なんかしたくない、というのがお役所的な発想だろうか。

ワクチン接種の可否は疫学的アプローチ=統計的に接種する利益が副反応の損失より大きいということだが、これは「社会全体にとって」の計算であって、副反応疑いで死亡した個人や遺族にとってはたまったものではない。つまり、有害事象の救済は個別的・病理学的アプローチであるべきはず。今はそこが混乱していて追いついていない。中日のピッチャー木下雄介氏の死も救済制度でははじかれている。

副反応疑い死亡1854件は、国内トータルで3億回以上の大量接種というプールに注いだ雨滴のようなものだろう。雨滴はプールに落ちればたたえられていた水と混ざり、見分けがつかなくなる。が、しかし、一つひとつの雨つぶにも死を避けられなかった生物学的必然性があり、何よりもそれぞれの人生が宿っている。因果関係は、個別に深く掘り下げなくてはならないはずだ。

「疫学的有意性だけでなく、個別の病理学的な特徴にもっと注目したほうがいいのではないか」「いや、情報が足りない。因果関係がないとも判断できないから評価不能だ」と押し問答がつづく。

因果関係認定三基準というのが種痘副反応裁判で確立しているが、そもそも裁判まで進んでいるケースが少ないのでまだまだ将来の話である。ポスト・コロナにこれらのことに決着がつけられなければならない。

  1. 当該症状がワクチンの副反応として起こりうることについて医学的合理性があること
  2. 当該症状がワクチンの接種から一定の合理的時期に発症していること
  3. 他原因によるものであると考えることが合理的な場合に当たらないこと

情報量は多いがまだまだ途中経過。この先、ワクチンを打ち続けるのかと言われたらもういいかなあ、と思ってはしまう。

山岡淳一郎氏は医療モノの調査報道・ライターとして信頼できると個人的には思っている。