El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

自分がおじいさんになるということ

2040年問題に向けて粛々と歳を重ねる 自分がおじいさんになるということ 作者:勢古 浩爾 草思社 Amazon 10年先行老人、勢古浩爾氏の最新老後エッセー集。この手の定年本、定年後本、老後本は買わないと思っていてもつい油断すると買ってしまう。たいした内容…

ロボット手術と前立腺がん・ロボット手術と子宮がん

術者としては経験できなかったロボット支援手術の今をまとめておきたい ロボット手術と前立腺がん (祥伝社新書) 作者:大堀 理 祥伝社 Amazon ロボット手術と子宮がん (祥伝社新書) 作者:井坂惠一 祥伝社 Amazon 2冊とも祥伝社新書でほぼ同じ体裁、著者の二人…

死にかた論

もっと科学的になってほしい。 死にかた論 (新潮選書) 作者:佐伯 啓思 新潮社 Amazon 発達した脳が「自己」というものを持ったために「死」が「自己の喪失」となってしまった。「自己」が「自己の喪失」を理解できない、納得できない、それはまあ当たり前の…

ある男

過去に翻弄された大人たち、未来を生きようとする子供たち ある男 (コルク) 作者:平野啓一郎 コルク Amazon 「マチネの終わりに」「ある男」「本心」と「分人主義後期三部作」らしい。 「マチネの終わりに」が良かったので期待したが、他人どうしが戸籍を交…

古寺行こう(4)興福寺 行ってみた

国宝館のガラスケース無しの距離感は近い! 隔週刊 古寺行こう(4) 興福寺 2022年 4/26 号 [雑誌] 小学館 Amazon 毎月のように奈良に行っているので当然、興福寺周辺を歩いている。国宝館は面積比の国宝の数が多い、つまり国宝密度がやたら高い。今回、久しぶ…

君の顔では泣けない

一気に読ませる、入れ替わり人生論・カフカ的 君の顔では泣けない (角川書店単行本) 作者:君嶋 彼方 KADOKAWA Amazon 映画「転校生」でひとつのジャンル化した「男女の入れ替わり」というモチーフだが、入れ替わった男女(坂下陸・水村まなみ)がもとに戻れ…

ブックガイド(102)―長寿への人類史―

ブックガイド(102) https://uuw.tokyo/book-guide/ EXTRA LIFE なぜ100年間で寿命が54年も延びたのか 作者:スティーブン・ジョンソン 朝日新聞出版 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプ…

ツボちゃんの話 夫・坪内祐三

女たちに描かれる坪内祐三(去る者は日日に疎し・・・) ツボちゃんの話: 夫・坪内祐三 作者:佐久間 文子 新潮社 Amazon 2020年1月に病死した坪内祐三との生活を妻である佐久間文子が一冊の本にしたもの。坪内祐三の伝記と言ってもよく、これまで出版されて…

ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか 生物の死4つの仮説

なぜ死ぬのかに関する4つの仮説(やや冗長) ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか (新潮選書) 作者:更科 功 新潮社 Amazon ①自然淘汰的死亡説・・・自然淘汰を繰り返すためには世代ごとの死滅が必要。ある世代の100分の1が次の世代となり99%は淘汰されるとすると死…

マンガでわかるジャズ

あれっ!?、ジャズって同世代だったのか マンガでわかるジャズ: 歴史からミュージシャン、専門用語などを楽しく解説! 作者:山本 加奈子 誠文堂新光社 Amazon マイルス・ディヴィスが1926年生まれの1991年没。1926年は昭和元年、ということはマイルス・デ…

私とは何か 「個人」から「分人」へ

『マチネの終わりに』の蒔野と洋子の愛とはなんだったのか?その相手といるときの自分、について考える。 私とは何か 「個人」から「分人」へ (講談社現代新書) 作者:平野啓一郎 講談社 Amazon 大仰な哲学書のようなタイトル。しかし内容は、「自己」「他者…

マチネの終わりに

大人の恋愛と芸術と人生と マチネの終わりに(文庫版) (コルク) 作者:平野啓一郎 コルク Amazon 久しぶりに小説で感動。途中、恋の邪魔立てがはいってメロドラマ展開するのかと思って投げ出しそうになったが、そこからの男女の人生描写がすばらしく、平野啓一…

メスを超える 異端外科医のイノベーション

腹腔鏡手術やダ・ヴィンチ手術を支える医療VR メスを超える―異端外科医のイノベーション 作者:杉本 真樹 東洋経済新報社 Amazon 外科医療でこの30年間一番変わったのは腹腔鏡か胸腔鏡による鏡視下手術の劇的な拡大だろう。最初は胆嚢摘出術を腹腔鏡手術でや…

<弱者>の帝国 ヨーロッパ拡大の実態と新世界秩序の創造

なぜ西洋は「勃興」し、東洋は「没落」したのか? 〈弱者〉の帝国-ヨーロッパ拡大の実態と新世界秩序の創造 (単行本) 作者:ジェイソン・C・シャーマン 中央公論新社 Amazon 現在まで続くヨーロッパ(含むアメリカ)の世界覇権は歴史の中の一つのフェーズに過…

つげ義春 名作原画とフランス紀行

どんな場合でも、逃げるが勝ち(帯にあるつげ義春氏の名言) つげ義春 名作原画とフランス紀行 (とんぼの本) 作者:つげ 義春,つげ 正助,浅川 満寛 新潮社 Amazon つげ義春の漫画はなぜか定期的に読みなおしたくなる。そんな、文学的漫画家・つげ義春氏は作品…