El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ブックガイド(7)すべての病気は糖尿病に!

——すべての病気は糖尿病に!——

 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の医学知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています。査定歴20年の自称「査定職人 ドクター・ホンタナ」です。さて今回は・・・

認知症700万人時代。超高齢社会を背景に認知症を取り上げた本が増えていますね。患者・介護者・医師・研究者とさまざまな書き手がさまざまな立場で書くのでやや混乱気味です。また糖尿病についても低糖質ダイエットのからみで論争があります。どんな本でも書き手の立場を考えながら読まないと偏った考えを植え付けられる・・・本を読むのも怖い時代になりました。

そんな2つの病気、アルツハイマー病と糖尿病に関連がある、ということはここ10年位の間に久山町研究などで統計的に明らかにされています。いよいよそれが細胞レベルの代謝カニズムで解明されてきたというのが本書の主旨。「神経細胞インスリン抵抗性こそがアルツハイマー病の原因である」ことを著者らのこれまでの研究をなぞって解説してくれます。こういう著者の専門分野紹介モノの本にはどうしても手前味噌っぽい記述が多く、読んでいて、周知の事実なのか著者らの主張なのか、区別がつけにくいという欠点があり、主張に沿った事実しか語られていないのではないか・・という読み方もできると思います。(査定者にはそういう読みのセンスも必要ですが・・・)。

とは、言うものの、アルツハイマー病の現在の治療薬、糖尿病の現在の治療薬を総覧してくれており、アルツハイマー病と糖尿病の関連の中でどう治療をすすめて行くべきなのかということがスッキリとまとめられており役立ちます。新薬が続々発売され「糖尿病治療のいま」が見えにくくなっていますが、そこがアルツハイマー病とからめることで腑に落ちるかたちで理解できました。代謝疾患の本って患者向けのレベルのものかガイドライン的な面白くないものというのが相場ですが、ちょっとテーマがひねられているので面白く読めます。サブタイトルにある「驚きの・・」は大げさですが。

本筋からはずれますが、少量継続飲酒(毎日晩酌をするような行為)がいかにアルツハイマー病リスクを高めるかということが繰り返し書かれており、査定職人ホンタナもビビって休肝してしまいました(2-3日ではありますが・・)。(査定職人 ホンタナDr. Fontana 2017年10月)