El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ブックガイド(6)人口の過去・未来の人口

——人口の過去・未来の人口——

 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の医学知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドさせていただくことになりました。査定歴20年の自称「査定職人 ドクター・ホンタナ」です。

今回のブックガイドは査定を離れて、保険業の将来を左右するかもしれない日本の人口をテーマに。実は最近(2017年7月)同じ著者で「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(講談社現代新書)というのが出版され人気があるようなのですが、読んでみるとこれがなんとも薄い内容で、同じ著者の「日本の少子化 百年の迷走」を読んで感心していた私としては非常に残念。そこで、この機会にこちらのほうをレビューしておすすめすることに。

「未来の年表」が日本の人口の将来予測をもとにありふれた悲観論を並べているのに対して、こちらは終戦からベビーブームの時代に将来の人口爆発を予測して何が行われたかという、つまり人口の過去を検証しています。過去の出来事だけに、リアリティもあれば数々の証拠も掲げられています。私はこの本で長年の疑問が氷解しました。それは「団塊の世代を作ったあのベビーブームが急に終わったのはなぜ?」という疑問です。私はポスト団塊世代なので当時(昭和25年前後)の世の中がどうドライブされていたのか実体験はできませんでしたが、この本を読むとそれがスッキリわかります。

あまりネタバレするのもアレですので、そのうち一つだけ「優生保護法改正による人工妊娠中絶の実質自由化!」、そこにはメシの種を探していた医師もけっこうからんでいます。当時は戦争末期に濫造した軍医が大挙して復員してきて空前の医師過剰の時代だったんですね。バブル期に定年を迎えつつあったたくさんの社医先生も同じ世代です。産婦人科ブームでもあったわけです。

しかし、本書でもわかるように、近代以降は常に人口爆発こそが人類の脅威だったわけで、世界的にはこれからもそうでしょう。人口減少日本の悩みなんて贅沢な話なのかもしれません。戦争に向かう人口爆発については「日米戦争はなぜ勃発したか―メシの問題からみた昭和史と現代日本」(高橋英之)がおすすめです。今回出てきた3冊で日本の人口知識はバッチリ!?   (査定職人 ホンタナDr. Fontana 2017年9月)

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