El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

一下級将校の見た帝国陸軍

 今も同じだよ

一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)

一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)

  • 作者:山本 七平
  • 発売日: 1987/08/08
  • メディア: 文庫
 

非常に示唆に富む。軍の教育は、「馬の調教」-説明抜きでOJTを積み上げる。全体を俯瞰させることがない。これなどまさによくある話で、会社にも医務職オンリーレベルでもよく遭遇する出来事。

一切にリアリティがなかった。すべての人が故意に現実に背を向け、虚構の中で夢中で何かを演じ、それによってそれが現実だと信じようとしているように見えた。--これもまた、むやみに理論なきコストカット指示やらInsTechなどと中身のない話=虚構の中で上司(役員)にたてつけず、夢中でそれに取り組んでいる姿を演じ、演じることでそれが実行可能な現実だと信じようとしている姿を思い起こさせる。

(引用)士官学校出はずんずん階級があがる。階級があがればポストも変わる。したがってあるポストは次のポストへの一段階である。だがそのポストの背後で、一切を取り仕切って組織を”自転”させているのは、このタイプの無学歴将校であった。復員官は、結局、官庁も同じことだといった。帝大出の若造課長の隣に、定年間近の課長代理や係長がおり、課長はどんどん昇進していくが彼らは動かない、そこで本当に組織をにぎっているのは結局彼らであると。「不合理なようですが、このシステムにも長所はあると思いますよ」と彼は言った。彼によればさまざまな部署に腰掛けることによって全体を見通す目を持った指揮官と、組織の末端を完全に掌握している実務官と、この二つがあいおぎなってプラスに作用すると、その組織は大きな力を発揮する、「したがって調子のいいときはいいし、その組織の運営の仕方だけで対処できる間はこれが一番いいんですよ。だが、組織そのものの中身を変えて対処しなければならない場合は、だめですな。結局、壊滅するまで同じ行き方を繰り返しながら、それ以外に方法がないという状態になっちまうんです・・・・」・・しかり