日本型雇用と長時間労働の絡み合いがよくわかる
欧米(特に欧)では、経営層やエリート層というのはそもそも少数で、社会に出た時からエリート層と一般人は明確に区別がある。上昇志向のエリート層とは異なり、一般層には長時間労働をするというインセンティブはないわけで、定時に帰るし、必要最低限の仕事しかしない(=日本でいうところも「静かな退職」が当たり前の世界)。
日本では、新卒大量採用に始まって、自分がエリート層なのか一般層なのかが、微妙にわからない、ゆえに長期間にわたって競争状態に置かれている。競争があるから、エリートへの生き残りをかけてモーレツ社員化する。その決着がついたころにはもう定年が近い。だから、社会に出てずっと過剰に働かされてしまう。
男社会の頃はそれで回ってきたが、女性の社会進出が進むと、女性のライフイベントがそもそも日本型競争社会になじまない。妊娠、出産、育児で競争から脱落しかねないし、パートナーに協力を求めると今度はパートナーのほうが競争から脱落してしまう。
過剰に競争をあおって働かせようとする社会と男女共同参画社会がなじまないという現実。そのあたりの構造分析がわかりやすい(1章~4章)。
後半は「静かな退職」的な働き方でうまくやっていくテクニック集になっていて、これはまあ個人のおかれた環境によってはチグハグな感じもする。しかし、前半だけでも学びの多い本。