El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

知ってるつもり

わかったつもり・・にならないように

知ってるつもり――無知の科学

知ってるつもり――無知の科学

 

翻訳タイトル「知ってるつもり 無知の科学」は本書第9章までに相当。ここまで(量としては3分の2・・)、延々と「人間はいかに無知であるにも関わらず、無知であることがわからない存在か」が、さまざまなシチュエーションを例にあげて語られる。そこで、「ああ、人間はこのように無知なのね」と本書のテーマをわかったつもりになってしまいがち(私も)。

ところが第10章で「個々の人間は無知なのに人間が進歩できたわけ」へと大きく転換。第11・12章「個々の無知は必然のものとして、それを集合知でいかに克服してきたか」「集合知を使えるような教育」「ナッジによる個々の無知から集合知へのプッシュ」と認知科学的結論にむかう。そうすると、原題「The Knowledge Illusion. Why We Never Think Alone.」がぴったりはまる。

前置きの9章までが長いので、そこまでで「わかったつもり」になって放り出してしまうと、まさに「無知の科学」を地で行くことになりかねず。