2024年度の読書企画のテーマは「マジック・リアリズム」アメリカ編。できれば2025年度にアメリカ以外編を。
4月からの新年度のシリーズ読書、2022の「平家物語」、2023「源氏物語」ときて、日本の古典が続いたので、ぐーんと離れてラテンアメリカ文学を中心としたマジック・リアリズム小説を読んでみたい。ちょうと「本の雑誌」4月号の特集「マジック・リアリズムに酔い痴れろ!」とも連動。頭がグチャグチャになるくらいに!リストは↓
2024年度の読書企画のテーマは「マジック・リアリズム」アメリカ編。できれば2025年度にアメリカ以外編を。
4月からの新年度のシリーズ読書、2022の「平家物語」、2023「源氏物語」ときて、日本の古典が続いたので、ぐーんと離れてラテンアメリカ文学を中心としたマジック・リアリズム小説を読んでみたい。ちょうと「本の雑誌」4月号の特集「マジック・リアリズムに酔い痴れろ!」とも連動。頭がグチャグチャになるくらいに!リストは↓
気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトのブックガイドです。第122回目のテーマは「安楽死」。生命保険にとってもむずかしい問題です。日本では関わった医師に有罪判決が下されることが多く、医療界においてもタブーとなっています。ところが、スイス・オランダ・カナダなど安楽死が合法な国は増えています。そんな国の現状を知っておくための一冊です。
最初に安楽死が合法の国で起こっている主な事象をまとめると以下の5点です。これらは、この先安楽死が合法化される国で次に起きることは何かを教えてくれます。
安楽死が合法化された当初は「疾患末期の苦痛からの救済」という意味合いが強く、安楽死には「重大な病気があり、治療が不可能で、不可逆的に状態が劣化しており、耐えられない苦しみがある」など特定の条件を満たす必要がありました。そうした条件を満たして初めて、患者の自発的意思に基づき、医師が致死性の薬物を注射するか、医師が処方した致死薬を患者が自身の意思で服用することによって死に至らせる行為が安楽死だったわけです。
ところが、安楽死が合法化された国々では安楽死の対象者が拡大しており手続き要件が緩和される傾向にあるため「偽装安楽死」が発生しやすい環境が形成されています。また、安楽死と緩和ケアが混同されることにより、安楽死が緩和ケアの一部として誤解され、医療現場での安楽死が日常化してしまうリスクも指摘されています。
本書では、冒頭に相模原の障がい者施設での大量殺害事件が取り上げられており、いきなりセンセーショナルなゾーンへ議論が運ばれます。そのため「そうだよね、日本で安楽死なんて認めたらあぶないよね」という話に誘導されてしまいます。そこにヨーロッパ、北米での安楽死の適応範囲の拡大が取り上げられ、あんなこともあった、こんなことも起こったと、まるで坂を滑り落ちるようにナチスの優性思想的な弱者の排除が拡大しているというトーンで事例が取り上げられています。
一方で本書では、超高齢者医療も同じ次元で語られるところは気になります。橋田壽賀子さんの「安楽死で死にたい」が否定的に取りあげられており、結論として「すべての生は礼賛されるべき」というナイーブな話になってしまいます。
私は「障がい者や難病患者の安楽死」問題と、超高齢者問題は切り離して考えるべきだと思います。「障がい者や難病患者のケア」は社会の少数弱者を社会の制度として支えようという福祉の話ですが、高齢者医療はそのボリュームの大きさから医療経済としてとらえる必要があるでしょう。「命の話に経済を持ち込むことは悪」みたいに書かれていますが、経済的に持続可能であることも重要だと思うのです。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2024年3月)
西ヨーロッパ人がここまで他の人種に対して残虐でいられる理由がわからない
「すべての野蛮人を根絶やしにせよ」ー『闇の奥』とヨーロッパの大量虐殺
歴史観がかなりクリアになる、名著。構成が凝っていて最初は面食らうが、わかって読み始めると近代史の謎の部分に光があたりモヤが晴れたような気分になれる。
南北アメリカ、オセアニア、アフリカそしてアジアの大部分で行われたヨーロッパ人による大虐殺による民族絶滅。実際に絶滅した、アメリカ先住民、タスマニア人、アボリジニ。
そんな残酷な行為を可能にした思想的背景、キュビエーライアルーダーウィンーウォレスーラッツェルーヒトラーという思想の系譜。進化論にはその根本から優性思想が内包されていたわけだ。劣った種族は絶滅する運命にあり、それを促進することが彼らのためでもあるー。
ヒトラーのユダヤ人虐殺は特殊ではない、同じことはヨーロッパ人によって100年前から世界中で行われていた。今なお何食わぬ顔で超大国として存在しているアメリカやEUやロシアの勃興の原点は非ヨーロッパ人をしてきた歴史にある。ヨーロッパ人の残虐、許すまじ!
と、ついつい一人のアジア人として熱くなってしまうくらいの本。
「大航海時代」「黒人奴隷時代」「帝国主義時代」、どれも欧米人種の残虐さ傲慢さが根底にあるが、そのメカニズムは別物として理解すべき。現代は抑圧された人々が移民という形をとってヨーロッパやアメリカを侵略しなおしているとも言えるかも。
引用
ヒトラーの少年時代、ヨーロッパ人が持っていた人間観の主な要素のひとつは、”劣った人種”は自然の法則によって絶滅を運命づけられている、という信念だった。すぐれた人種はその絶滅を推し進めるべきだ、それこそが真の慈悲である、と考えられていた。P24
新たに侵略した土地に住んでいた先住民が飢餓や虐殺や感染症で死んでいくことを「絶滅の運命」と言い切るという心性はどこからきたのか。
(中国人が大砲を発明したが、住んでいる地域で脅威を感じなかったため、積極的利用にいたらなかった)十六世紀、発展が遅れていて資源にも乏しかったヨーロッパが、遠くからでも死と破滅をもたらす大砲を載せた船の専売特許を獲得するに至った。ヨーロッパ人は大砲の神となり、敵の武器の射程内に入るはるか前から、殺戮を繰り広げられるようになったのだ。P77
帆船時代は海岸に近づき艦砲射撃で殺戮。故に、占領地は海岸沿いに限定されていた。蒸気船時代になって川を遡れるようになると虐殺は内陸へと広がった。
ヨーロッパ各国は競うようにマスケット銃の使用をやめ、後装十を使うようになった。イギリスは紙製薬莢をもとに真鍮製の薬莢を開発した。これで輸送中も火薬は保護され、発砲時の煙は閉じ込められ、ドライゼ銃の三倍もの距離まで弾が飛ぶようになった。(中略)こうしてヨーロッパは、他の大陸の、考えうるあらゆる敵よりも優位に立った。P81
信長の長篠の戦いである。あれを世界レベルでやったわけだ。
新たな武器の助けを得て、植民地侵略はきわめてコスト効率のよい事業となった。必要とされる費用はほぼ、人を殺すための弾薬代にかぎられていた。P83
ダーウィン以後、人種こそがなにより決定的な要因であるという考えが広まった。人種主義は許容され、イギリスの帝国主義イデオロギーを支える主柱となった。P202
ダーウィンも優性主義的あった。
(貧乏人の子だくさん現象を受けて)人種間の戦いこそ、文明社会の活力を保って進歩を可能にする唯一の方法だ、とグレッグは考えた。文明によって自然選択の法則が通用しなくなった結果、われわれの人種が堕落していくのを防ぐには、ほかの人種を絶滅させるよりほかに道はない、と。
文明の悪影響で適者生存から逸脱して劣った集団や人種が増えていくという現実を是正するために、つまりヨーロッパ人に都合の良い形で適者生存を人為的に達成するために虐殺・・・。
それにしても、西ヨーロッパ人がここまで他の人種に対して残虐でいられる理由がわからない。残虐でいることで現在の地位を築いたことの裏返しなのだろうか。あるいは、内向きのキリスト教的博愛の逆説としての外向き異教徒への迫害?
脳はトータルで考える!
タイトルはちょっと中身とはズレているような・・・、しかし視点の新しい脳科学書として読む価値はある。
語り口(文章が・・)が朴訥としているので地味な話が続くのかなあと思って読み進むと、著者自身の実験結果を踏まえながらのニューロン、シナプスの説明がステップ・バイ・ステップでたいへんわかりやすい。脳科学の名を借りて自分の言いたいことばかり言ったり、他人が書いた本の中身を要約しただけのような脳科学本が多い中では良心的。またAIの限界を脳科学的知見から噛んで含めるように教えてくれて、納得感あり。
なによりも、現在主流の要素還元主義的な脳科学=特定の脳領域や特定の機能や物質にフォーカスして語る脳科学(例えば「認知症=アミロイド沈着」というような硬直した1対1の発想)がいかにダメかがよくわかる。以下に引用―
脳は多能性をもつ部位とニューロンを調整し変化させながら、常に全体として活動している。個々の部位と脳全体の関係を、また個々のニューロンとニューロン集団の関係を、それぞれ絶妙に調整しながら、また必要に応じて柔軟に変化させながら、脳は働いているらしい。そのような調整を自律的にできるということが、まさしく脳の特性である。単純な役割分担による機能局在が脳の特性であるという(間違った)考えは、人にとって(語りやすく)わかりやすいシステム(の構造)を脳に投影しているにすぎない。(P209・カッコ内筆者挿入)
結局、マクロな脳部位のレベルでも、ニューロンのレベルでも、そして神経伝達物質と遺伝子のレベルでも、脳の特定の機能を単独で担うものは存在していない。また特定の機能を損なう疾患や障がいにも、単独犯として関わるものは存在していない。脳の機能は、多様な部位、多様なニューロン、多様な神経伝達物質、そして多様な遺伝子が相互作用しながら働くアンサンブルによって実現されていると考えざるを得ない。(P222)
著者は心理学畑から脳科学にすすんだようで、そういう経歴があってこそ包括的な脳の考え方が提唱できるのだろう。
シロウト目線・・・
かなり近視眼的な本。激安ニッポンであることは確かだが、原因は著者が言うような「長年の企業・役所の生産性の低さ」や「イノベーションのなさ」というよりは、長年の金利政策による円安誘導だろう。
賃金と物価をリンクさせて考えるには、「単位時間賃金で買えるものが何か」で考えなければダメでしょう。日本の時給が1000円でビッグマックが2個買えるとして、アメリカの時給が20ドル(=3000円相当)でもビッグマックが2個しか買えないなら、日米差はないわけ。この場合、為替が50円=1ドルだったら何も問題ないはず。
この為替を輸出企業のためもあって金利差や金融緩和で150円=1ドルにしているから激安ニッポンになるんでしょ。給与が上がらないけれど物価も上がらない、という安定生活を30年やってきた。それはそれでアリだったのでは。著者ごひいきのイギリスや欧米がそんなに暮らしやすいとも思えず。
しかし、しかし、コロナ後のインバウンド復活もあり、安い日本も買われすぎれば物価も給与も上がっていきそうだ。それがいいことなのかは見えにくいし、対策もたてにくい。
円安で輸入品が値上がりするのは当然だが、いわゆる輸出が好調なものでも、世界戦略商品ー自動車、カメラ、オーディオなどは「価格のグローバル化」でドル建ての基本価格を為替換算するやり方がだんだん一般的になり(まあ、部品を輸入したり、中国で作ったりしているの当然なのだが)、グイグイと値上げしていきそうだ。
特に、ゲーム機、カメラや小物家電など日本で買って持ち帰れるものは内外価格差が大きいとインバウンドの転売ヤーが爆買いして日本の消費者に回らないので値上げせざるを得ないなんてこともあるようだ。
下の記事にある「SACD30n」を昨年末に購入したが、それが7月には10万円近く(定価ベースで28%)も値上げされるようだ。いろいろ今が買い時ということかも・・・
ウクライナを見よ、ガザを見よ!
昨年亡くなったコーマック・マッカーシーの代表作。乾いた文体(うまく日本語でも表現されている)。
1850年頃に実在したグラントン・ギャング団というインディアン狩り(もちろん、それ以外のメキシコ人や黒人やアメリカ人も平気で無造作に殺す)集団の興亡を描きながら、それら悪漢たち、とくにグラントンとホールデン判事の「殺す論理」が随所に開陳される。殺す論理があって、実際にとことん殺す。
ホールデン判事は言う「人間は戦争をこよなく愛しているから戦争はなくならない、人間は戦争によって文明や科学を発達させてきただけでなく戦争をするからこそ高貴なのだ、戦争こそは神である。」
主には少年(Kid)の目を通して、それらすべてが語られるのだが、地の文と会話とが分けずに書かれるという独特の記述で、主語がいったいだれなのか戸惑いながらも、酔ったように読み進む独自のグルーブ感がある。
wikiからの引用↓
本書がアメリカ先住民虐殺に対し、これが人間のすることかという人道的な怒りを告発していないことは明らかで、 それはマッカーシー本人の発言からも分かる。1992年のインタビューにおいてこんな発言をしている。
「流血のない生などない。人類がある種の進歩をとげ、すべての人が仲良く平和に暮らせるようになり得るという考えは危険だ。そんな考えに取りつかれる人たちは魂と自由を平気で捨ててしまえる連中だ。そんなことを望む人間は自ら奴隷になり、命を空虚なものにしてしまうだろう」
「殺される側ではなく殺す側にならなければ殺される」、過保護なコンプラ社会からみたらとんでもない話だが、ウクライナを見よ、ガザを見よ!