<マジック・リアリズム >4月は「族長の秋」
ラテンアメリカ文学のひとつの分野として確かにある「独裁者小説」。それをガルシア=マルケスが書くとこうなる。独裁が達成されるまでのことはほとんど書かれておらず、その独裁のマイナスの面がたくさんあって、それが結局は独裁者の末期(まつご)に関わってくる、独裁とは結局割に合わない。心の平穏を得られない、ということはよくわかる。
とはいえ、時間軸や話者は誰なのかなどが、はぐらかすようにずらして書かれているので、そこはかなりマジック・リアリズム的。その混沌感がガルシア=マルケス的なのかもしれない。個人的にはバルガス=リョサが描く独裁者「チボの狂宴」のわかりやすささを推したい。