だれも死を直視できない がん民間療法を静かに告発する本
書評集なのではあるが、リアルタイムで才媛米原万里が「がん」と格闘しながらついには死に至る・・・その記録にもなっており読むのが苦しくなる。死を前にして、いかな才媛といえども、それを受け入れられず(当たり前だが)、さまざまな怪しいがん治療本を読み、実際にその治療法を受け続ける。おそらく、その過程で多くのお金をつぎ込んでしまったであろう。その意味では、巷に広がる末期がんの患者をターゲットとした怪しい(民間)療法を静かに告発しているとも言える。こうした「藁をもつかむ思い」の患者に藁にもならないデタラメな治療をほどこし金をむしり取る業界の存在はたしかにあるだろう。この本は、どんなに知的に優れるひとでも「死を直視することはできない」ということをあらためて気づかせてくれるとともに、そのような業界の存在を静かに告発している。